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生体牛をめぐる豪州との関係が悪化(フィリピン)
【シンガポール駐在員 外山 高士 6月15日発】フィリピンのアンガラ農業 長官は、現在実施している豪州からの生体牛輸入の一部禁止措置を強化する目的 で、向こう5年間にわたり、豪州から輸入される生体牛の頭数を、毎年前年比で 2割ずつ削減する計画を発表した。これは、先月、フィリピン産果物の病害虫の 検査に2年程度の期間を必要とし、これらが終わらない限り輸入を許可しないと 豪州政府が述べたことへの対抗措置とみられている。また、フィリピン政府は、 世界貿易機関(WTO)への紛争解決依頼についても検討しているとしている。 フィリピンは、豪州が衛生上の問題からフィリピン産果物の輸入を禁止してい ることが、貿易上の不均衡を招いているとして、同国が豪州から輸入している農 産物約16億豪ドル(約1,056億円:1豪ドル=約66円)のうち1億3千万豪ドル (約86億円)を占める生体牛について、輸入の一部禁止措置を発動しているとこ ろであった。なお農業省によると、昨年のフィリピンから豪州への農産物輸出金 額は、1千7百万豪ドル(約11億2千万円)しかなかったとしている。 フィリピン政府の公表している貿易統計によると、97年における生体牛の輸入 は約24万頭で、繁殖用純粋種として米国から輸入された8頭を除くと、残りすべ てが豪州から輸入されたものとなっている。また、その頭数も最近の経済の急速 な回復に伴い増加傾向で推移しており、農業省の発表では、99年の豪州からの輸 入頭数は25万頭であったとしている。 なお、牛の輸入業者がトウモロコシ農家に圧力をかけて豪州からの輸入禁止措 置を解除させる要望を提出していたとされる件について、農業省では、固い相互 関係に基づき、多くの輸入業者は同省の政策を支持していると述べている。 一方、今年は、約5万頭近く削減される豪州産生体牛の代わりの輸入相手国と して、政府はニュージーランド、米国、中国を候補に挙げている。ニュージーラ ンドと米国については、豪州から育種改良用として輸入していた純粋種を、今年 それぞれ2千頭と8千頭輸入する計画としている。また、中国については、5月 にエストラーダ大統領が訪中した際、両国間で専門家を派遣し、その可能性につ いて調査することで同意していたことを公表している。また、農業省では、すで に獣医師や検疫官を含む専門家の調査団を構成し、衛生問題について検討する段 階に入っているとしている。 豪州にとって東南アジアは、重要な肥育素牛の輸出先であり、フィリピンはそ の中でもインドネシアと並んでウエイトが大きい国である。今回の計画は、豪州 における生体牛の需給動向にも少なからず影響を及ぼすものとみられており、今 後の両国の動向が注目されている。
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