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アルゼンチン農牧庁、新農業対策案を発表
【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 6月21日発】アルゼンチンでは昨年来、 穀物などの一次産品価格の低下、高金利、燃料費や輸送などのサービスコストの上 昇で農業の収益性は落ちてきている。加えて経済自由主義を標ぼうするこの国に補 助金制度はなく財政建直しを課税強化に求める政策に農業者の疲弊感は大きい。昨 年(99年)農業4団体による一連の大規模ストライキは、推定最小所得税と農業融 資の金利課税(新2税)に反対した農業者の抗議だったが、マクロ経済に左右され る農産物輸出国農業者のやり場のない怒りが現れたものだった。 メネム大統領(当時)はストライキただ中で開かれた99年の農牧展で、実施中の 措置として、@一定条件を満たす農業負債に対する償還期間最長20年の借り換え融 資措置(借換金利については検討中)、A穀物価格下落に考慮した農業生産資材費 などの支払いを立て替えるための国立銀行による3%の金利補助付き8億ペソ(約 890億円:1ペソ=約105円)の融資を発表し、今後の計画として、新2税と小売価 格が上昇している農業用ディーゼル油の内税(12セント(約13円)/g)の廃止を 含めた運用検討などをアピールした。 その後デ・ラ・ルア政権の下、ベロンガライ農牧水産食糧庁長官は、農業負債対 策と穀物価格下落に対する農業融資を当面の課題とした。農業者の負債は深刻で、 91年兌換(だかん)法導入以後インフレを見込み高金利で国立銀行融資を受けた農 業者が結局返済不能に陥り、同銀行が担保に取っている膨大な優良農地が競売にか けられる問題に発展していた。 同長官が就任し半年を経たが、その間農業団体と根気よく話し合いを続け、5月 下旬にマチネア経済大臣が以下の農業対策を発表した。@国立銀行の借換融資の年 間金利を9.17%にする(一般は12.3%)、AYPF社販売(需要の50%を占める) の農業用ディーゼル油を一定条件の下、卸売価格で提供する、B新しい農業保険制 度の構想。新2税の廃止などについては、農業への影響は認めたが財政赤字対策と して不可欠として検討を先延ばしした。 農業団体は財政厳しい折政府が具体的な対策を打ち出したことは評価したが、@ については借換融資対象基準が厳しく新2税が存続する限り借換金利を引き下げて も意味がないとし、Aについては、卸売価格で提供される農業用ディーゼル油の販 売システムが複雑で実効性に問題があることとその品質が落とされる方針に反対し た。 大きな権限を持つ経済省の下で、同庁のさい配も限界があるが、農業団体が今回 の発表に満足していないことは明らかで、農業ストライキも含めて今後の成り行き が気になるところである。
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