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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 3月9日発】EU委員会のバーン委員(公衆衛 生/消費者保護担当)は、3月1日、デンマーク食料・農業・漁業大臣と会談し、 今後すべての加盟国を対象としてBSE(牛海綿状脳症)防止対策を強化徹底する 方針を表明した。 すべての加盟国を対象に、と畜場におけるBSE感染源となりうる特定危険部位 (SRM)除去のルール化を推進し、さらにBSEの疑いがある疾病・死亡牛に対 する検査の徹底を図るための提案(4月初旬)を行うこととしている。 現在、EUでは、と畜場におけるSRM除去に関して加盟国ごとに実施基準を定 めているため、BSEの発生が少ない加盟国では実施に消極的である。これまで、 イギリス、アイルランド、ポルトガル、フランス、オランダ、ベルギーおよびルク センブルクの7ヵ国でSRM除去を実施しており、イタリアおよびスペインでは輸 入牛肉に関してのみ実施している。また、BSEの疑いのある疾病・死亡牛に対す る検査の実施状況も加盟国間で差が見られる。 今回の方針は、最近のBSEの発生状況を背景としている。 2月28日には、これまでBSEに対して安全とされていたデンマークで、初め て同国原産の牛1頭からBSEの感染が確認された。感染源は、BSEに汚染され た牛由来の飼料とみられている。同国政府は、対策としてSRM除去を含めたと畜 方法の改善およびSRMを含むすべての製品の回収といった措置を指示した。なお、 この問題に対し、ノルウェー、リトアニア等でデンマーク産牛肉の輸入禁止措置を 決定した。ただし、主要相手先であるイタリア、スペイン、ドイツ等では措置を講 じていない。 また、EU委員会が公表した99年のBSE発生状況は、次の通りである。 (単位:頭)
加盟国 |
98年 |
99年 |
増減 |
イギリス ベルギー フランス オランダ ポルトガル アイルランド |
3,197 6 18 2 106 83 |
2,232 3 31 2 170 95 |
-965 -3 +13 0 +64 +12 |
合計 (イギリスを除く) |
3,412 ( 215) |
2,533 ( 301) |
-879 ( +86) |
99年のBSE発生件数は、2,533頭で98年(3,412頭)から減少し ている。内訳は、依然としてイギリスが大半を占めているが、イギリスの発生件数 は着実に減少している。一方、ポルトガルやアイルランド等で発生件数が増加して いる。 EUにおけるBSE問題は、96年3月の再燃後、ようやく99年8月からイギ リス産牛肉輸出の解禁が決定し、終息に向かうものとみられていた。しかし、フラ ンスおよびドイツは、なおこの決定の履行に至っていない。BSE問題で失墜した 食品の安全性に関する信頼を完全に回復するためには、まだ課題が残っていると言 える。
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