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【シドニー駐在員 野村 俊夫 3月9日発】豪州ニューサウスウェールズ(NS W)州のフィードロットで、2月25日、高い湿度を伴った熱波が発生し、2日間 で1,250頭もの肉牛が死亡するという事故があった。 現地からの報道によると、同州内陸部の穀作地帯リベリナ地方にある当該フィー ドロットの周辺では、前日までに75ミリメートルに達する降雨が記録され、その 直後に気温が急上昇して摂氏33度を超える猛暑となったため、最高湿度が85% に達した。さらに、無風状態であったことから、地域全体が蒸し風呂のような状態 になったとされている。 こうした中、肉牛の変調に気付いたフィードロット関係者は、25日、直ちに担 当獣医に通報し、救急措置を試みたが、肉牛の衰弱があまりにも急激に進行したた め、なすすべがなかったとされている。27日以降、肉牛の死亡は報告されていな い。 現在、NSW州農業省などが事故の原因について調査しているが、死亡した肉牛 には特に病気などは確認されておらず、局地的な異常熱波の影響による衰弱死との 見方がなされている。 当該フィードロットは、豪州内に4つのフィードロットと5つのと畜処理場を有 する国内最大牛肉企業(米国資本)によって経営されているもので、3万3千頭の 収容能力(営業許可頭数は6万頭)と最新の設備を持つ施設である。 当該フィードロットには、肉牛を直射日光から保護するための日よけが備えられ ていたほか、急激に気温が上昇した場合にはスプリンクラーが作動して肉牛のスト レスを防ぐ対策が取られていた。しかし、その作動条件が湿度60%以下にセット されていたため、85%もの高湿度の下では的確に作動しなかったとされている。 豪州フィードロット協会(ALFA)によると、豪州では、摂氏33度以上の気 温が年間750時間を超える地域のフィードロットを対象に、日よけを設置するこ とが義務付けられているが、事故のあったリベリナ地方はこの条件には該当してい ないとされている。 豪州では、91年にも、クイーンズランド州にある別のフィードロットで、やは り熱波の影響によって約2,600頭もの肉牛が死亡するという事故があった。今 回の事故は、それに次ぐ規模となる。 今回の事故による損害は140万豪ドル(約9千8百万円:1豪ドル=約70円) に達するとみられているが、直接の損害のみならず、フィードロット産業全体のイ メージダウンが懸念されている。 放牧のみで仕上げる肉牛生産が主体の豪州では、フィードロットで飼養される肉 牛は飼養頭数全体の約2%にすぎないものの、飼養されている肉牛の過半は日本向 けであり、対日輸出の面での比重は極めて大きい。今後、ALFAを中心に再発防 止に向けてフィードロット運営基準の見直しなどを検討するとみられる。
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