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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 3月9日発】タイでは、拡大するアイスクリ ーム市場に新規参入者が増加するなど、活気づいている。大手企業のチャロン・ポ カパン(CP)は、新規参入に向けて現在準備を行っている。また、中小企業のチ ョムタナ社は、大手に対抗して安価な「クレモ」ブランドのアイスクリームを新規 に投入し、市場シェアの獲得に乗り出している。業界第1位のウオールズ社は、9 9年に減少した市場シェアを奪回するための体制を整えている。 タイのアイスクリーム市場の規模は、98年が推定で54億バーツ(1バーツ= 約2.9円)、その企業別シェアは、第1位がウオールズで約43%、第2位がユ ナイテッドで約18%、第3位がネスレで約9%となっていた。また、99年の市 場規模は前年比3.7%増の56億バーツ、同シェアは、第1位のウオールズが2 ポイント低下して約41%、98年に第3位であったネスレは、6ポイント上昇し て約15%となり、第2位に躍進した。しかし、98年に第2位であったユナイテ ッドは、4ポイント低下して約14%となり、第3位に順位を下げている。 また、タイの年間1人当たりのアイスクリーム消費量はわずか2gで、米国の2 2g、豪州の18g、イタリアの13gなどと比較しても大幅に低いものとなって いる。さらに、隣国のマレーシアの2.5gをも下回っているため、タイのアイス クリーム需要は、潜在的に拡大する余地があり、今後の経済の回復に従って大きな 伸びが期待できるといわれている。 このような状況の中、業界第2位となったネスレは、ミンブリ県に年間3千万g の製造能力を有するアイスクリーム製造工場で年間2千万gを生産し、その5%を 輸出に振り向けているが、海外市場への供給をさらに増加させるため、2〜3年以 内に製造能力の拡大を計画している。また、過去5年間、関連企業に対し4億6千 万バーツの設備投資を既に実施するとともに、商標イメージを高めるため、冷凍庫、 販売車両などの器具、備品に1億5千万バーツの予算を措置した。さらに、今年は 販売促進のため、メディアなどに約1億8千万バーツを費やすとしている。このよ うな積極的な投資によりネスレは、市場シェアが2000年に20%、2001年 に25%になると予測している。 一方、ネスレグループは、2004年のアセアン自由貿易圏の関税率引き下げを にらみ、同域内の工場で生産している共通商品を、それぞれ1工場に集約して生産 する体制を準備している。タイの工場では、アイスクリームを製造し、これをマレ ーシア、フィリピンなどに輸出する。また、マレーシア、フィリピンの工場は、ア イスクリーム以外の製品を受け持つこととなる。しかし、現在、タイとマレーシア で製造している「ドラムスティック」アイスクリームは、今後タイでの製造を中止 し、マレーシアから輸入することとしている。 このような戦略は、低関税の恩恵を受けるのみならず、製品の品質、規格などの 統一が図られ、コスト削減にも大きく寄与するとしている。
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