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増加した99年のアルゼンチン豚肉生産



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 5月11日発】アルゼンチンの豚飼養頭
数は、ブエノスアイレス、コルドバ、サンタフェの3州に集中し約220万頭、うち母
豚は約20万頭。同国の豚肉生産は、最近では産業として底上げする取り組みも見ら
れ、穀物や牛肉生産に比べれば規模は小さいながら、徐々に生産量を増加させてい
る。99年の豚と畜頭数と豚肉生産量(枝肉ベース)は前年比それぞれ18%、16%
増加し、輸入量(製品ベース)は7%減少した(表参照)。 

 豚肉とその加工品の輸入は兌換(だかん)法が導入された91年後半から増加し、
主に安価なブラジル産が輸入された。当時養豚は、穀物生産の副業的存在で技術改
良によるコストダウンは図られていなかった。92年に輸入量が約3万トンになり
国内養豚業の重要性が認識され始め、以後徐々に濃厚飼料多給の集約的な舎飼い肥
育が行われるようになった。舎飼い肥育は、大手ハム加工業者や大豆搾油業者など
50社近くによる会社経営によるもので、国内生産の半分を占める。残り半分は1戸
平均約100頭の母豚を飼養する約1,500戸の農家による放牧経営で生産される。

 99年の豚肉生産量の増加は、同年の豚肉消費の伸びに加え、98年の国内豚価
が良好で多くの舎飼い経営で母豚を大量購入したため、99年に入り多くのコマー
シャル豚が市場に出荷されたのが原因と考えられている。99年はと畜に占める母
豚の割合が前年と比べ増えておらず、家畜保留下での増加である。

 輸入(製品ベース)については全体で7%減少、内訳は加工原料用の生鮮豚肉が
12%減少し、逆にハム、腸詰類の加工品が15%増加した。これは国産の加工品が輸
入物に代替されたためで、特に加工品の消費が増えたのではないようだ。99年の
消費量の増加は生鮮肉の消費によるもので、生鮮肉の需要は主に国産で賄われてい
るとみられる。

アルゼンチンの豚肉需給
  98年 99年
と畜頭数(頭) 2,100,00 2,484,538
生産量(トン) 189,800 221,000
輸入量(トン) 71,198 66,240
輸出量(トン) 2,005 2,920
消費量(トン) 258,993 284,320
1人当たり消費量(kg) 7.2 7.8
注1 生産量は枝肉ベース、輸出入量は製品ベース
 2 消費量は単純に生産量+輸入量−輸出量で求めた値
 3 と畜頭数は、オンカ(政府機関)に登録されている食肉処理加工施設でと畜された頭数

 大手17社の食肉処理加工業者が直接生産者に支払う生体価格、赤身肉価格(脂肪
の少ない枝肉に対するプレミアムのついた価格)は、豚価情報システム(SIPP)
の下で売買取引の参考として公表されている。こうした公表価格や輸入価格を目安
として、国内一般の豚の取引は行われている。

 99年のSIPPに基づく生体価格と赤身肉価格は、それぞれ1kg当たり0.76
ドル(約82円:1ドル=約108円)、0.99ドル(約107円)で、98年の1.02ドル
(約110円)、1.32ドル(約143円)に比べ大きく下落している。


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