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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 5月11日発】オランダの養豚は、南・東部地 域を中心に集約的な生産が行われており、大量の家畜ふん尿による畜産環境問題 (河川・地下水等の汚染)が深刻化している。一方、EUの「硝酸塩指令」(91/ 676/EEC)では、農業生産に伴う硝酸塩汚染を防止するよう求められているが、 十分な対応ができておらず、EU委員会から再三警告を受けている。また、過密飼 養については家畜伝染病のまん延の危険性も指摘されている。 このような状況を改善するため、98年9月から豚飼養頭数削減のための法律が 施行された(「畜産の情報」海外編98年12月号参照)が、補償が十分でないな どの理由で生産者に強く反対されたため、現在はとん挫している。このため、本年 3月22日からは、養豚農家の申請に基づく補償金の交付等による離農の推進が開 始された。 同施策の内容は以下の通り。 ・目標は6,000戸以上の養豚農家の削減で、これにより年間2万1千5百トンのリン 酸塩排出の削減を図る。 ・生産者は養豚生産の中止または削減に対し補償される。 ・施策は2002年まで3段階に分けて実施される(今回実施されているものが第1段 階)。補償額は徐々に引き下げられる。 ・生産者は削減したリン酸塩重量(キログラム)に応じて補償金が支払われる。第 1段階の補償単価はリン酸塩1kg当たり36.5ギルダー(約1千6百円:1ギルダ ー=約45円)で、肥育豚1頭当たりでは190ギルダー(約8千6百円)に相当する。 ・南・東部の家畜過密地域では現存の農場施設を取り壊して住宅建設をする生産者 へ助成するための基金を創設する。助成金は1平方メートル当たり50ギルダー (約2千3百円)である。 また、全体予算としては、中央政府から6億7千万ギルダー(約3百億円)、地 方から11億2千万ギルダー(約5百億円)が見込まれており、第1段階としては、 これまでに生産減への補償として中央政府から1億ギルダー(約45億円)、養豚施 設の取り壊し・住宅建設に地方から1億7千万ギルダー(約77億円)の少なくとも 計2億7千万ギルダーが配分されている。 第1段階の当初の期限であった4月19日までの承認農家数は1,902戸(うち、生 産中止農家:1,084戸、住宅への転換農家:818戸)で、年間5,700トンのリン酸塩減 少に相当し、必要経費は2億ギルダー(約90億円)となった。目標に対し、農家数 で約3割、リン酸塩削減量では3割弱にとどまったため、同施策は1ヵ月間、5月 19日まで延長されることとなった。ただし、現状の豚肉価格は改善基調にあり、 補償額の増額等をしない限り思惑通りの離農推進は達成困難とみられている。 なお、ベルギーでも、環境対策のため、豚の飼養頭数を削減する施策を導入する 予定であると発表された。北部のフランダース地方では、7億2千万ベルギーフラ ン(約18億円:1ベルギーフラン=約2.5円)の買い上げ計画が発表され、同地域で 飼養されている550万頭の豚のうち約100万頭を削減することが目標とされている。
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