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米大統領、リステリア菌対策の強化を指示



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 5月11日発】クリントン大統領は5月6日の
ラジオ演説で、米農務省(USDA)と米保健社会福祉省(HHS)の長官に対し
て、ホットドッグ、ランチョンミートなどの調理済み食肉や食肉加工品に関するリ
ステリア菌対策の強化を指示したことを明らかにした。

 この中で、大統領は農務長官に対して、加工段階における相互汚染(cross-conta
mination)の防止、賞味期間内における安全性の確保などを図るため、適切な微生
物テストの実施などを定めた規則を120日以内に提案するよう指示した。また、HH
Sの長官に対しても、リステリア菌の汚染を減少させるために、さらに必要な対策
を特定するアクションプランを120日以内に策定するよう求めた。

 さらに、両長官は、消費者に対するリステリア菌に関する注意喚起の表示の必要
性についても検討することとなっている。

 こうした各種対策の強化により、クリントン政権は、2010年までにリステリア菌
による病気の発生件数を半減させるという当初の目標を2005年に前倒しできるとし
ている。

 リステリア菌は、土壌や水の中などに広く存在しており、生肉や野菜のほか、加
工後の食品も汚染することが知られている。サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O15
7ほどの広がりは見せていないものの、リステリア症を発症した患者のうち約2割が
死に至るという危険な病原菌である。中央疾病管理予防センター(CDC)の推計
によれば、年間約2千5百人が発症し、そのうち約500人が死亡しているという。

 98年の秋から99年の初めにかけて、発生した調理済み食肉や食肉加工品が原
因となった事件では、6人の胎児の死・流産を含めて21人が死亡し、101人が食中毒
となる悲惨な結果をもたらした。

 こうした事態を受けて、USDAは99年5月、食肉加工業者に対して、危害分
析重要管理点システム(HACCP)がリステリア菌に適切に対処しているかどう
かを確かめるため、その再評価を行うことを勧告するなどの3つの短期対策とリス
テリア菌に関する研究を進めるなどの4つの長期対策からなるアクションプランを
発表していた。

 一方、大統領自らが食品安全性に係る協議会を発足させるなど、食品安全性の向
上を政策の目玉の1つとして掲げているクリントン政権としては、今年に入って報
告された食肉製品の自主回収のうち、半数以上がリステリア菌の汚染によるもので
あったことなどから、さらなる対策強化に着手する必要に迫られたものとみられる。

 USDA食品安全検査局(FSIS)は、今月15日に公開会議(Public Meeti
ng)を開催し、リステリア菌対策について議論の場を設け、新たな規則策定の参考
とすることを予定している。


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