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養鶏業界で反米感情高まる(タイ)


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 11月2日発】タイの鶏肉産業関係者の間で、米国から
の鶏肉関税引き下げ要求などをめぐって反米感情が高まっている。

 バンコクではこのほど、タイ鶏肉振興協会が先導する養鶏関係者約3百人が在タイ
米国大使館前に集結し、タイに対し、強硬に自由貿易を迫る米国への抗議行動を行っ
た。生産者が皮肉を込めて、生きた鶏を大使館職員に手渡す場面が報道されるなど、
この抗議行動は国民の注目を集めている。同協会は、タイは97年からの経済危機に見
舞われたこともあり、同国の経済にはいまだ農産物を自由貿易の前にさらす余力はな
いとしており、タイ産鶏肉を輸入しようとしない米国こそ、自由貿易の理念に反する
と非難している。

 これに対し、米国大使館のスポークスマンは、米国がタイ産鶏肉を輸入しないのは、
衛生管理を怠り、米国の輸入要件を満たす意欲がないタイ政府の姿勢に責任があると
して、非難の矛先をかわす姿勢を見せている。

 一方、米国に対し、周辺国をも巻き込んだ抗議運動を展開する計画も進行している
とされる。タイ鶏肉加工輸出協会は、フィリピンやインド、中国など、米国との不均
衡な鶏肉貿易を強いられているとされる国々と歩調を合わせ、米国がアジア諸国に対
して行っている不均衡な鶏肉貿易の是正を求めていくとしている。現在、タイにおけ
る鶏肉および豚肉の輸入関税率は34〜48%であり、ガット・ウルグアイラウンド合意
に基づいて、2004年には30〜40%に低減される。しかし、米国はタイ政府に10%以下
のより低い関税率の受け入れを迫るべく、強力にロビー活動を押し進めているとされ
る。同協会は、米国がタイを第三国へ鶏肉を再輸出するための「加工場」にすること
を目論んでいるとして、政府の早急な対策を望んでいる。

 また、鶏肉の流通業界にも、こうした反米運動を支援する動きが出てきた。全国に
41店舗を展開する大手スーパーマーケットは、養鶏関係者による米国大使館前での抗
議行動直後に、今後は米国からの鶏肉と豚内臓の輸入を中止し、国産品のみを取り扱
うことを発表した。同社は長期的な経営戦略として、政府の基準に見合った優良な国
産農産物を取り扱うことで国内農業をサポートしていくとしている。同社は、国内最
大の養鶏企業であるチャロン・ポカパン(CP)グループから鶏肉の供給を受けてお
り、米国産鶏肉の輸入増加に危機感を持ったしにせの養鶏企業が、大手スーパーに働
きかけたとみる向きもある。しかし、大手スーパーがこうした行為に踏み切った背景
には、鶏肉輸入に関する反米感情が、一般市民の間にも浸透しつつあることがあると
思われる。

 このような反米感情の高まりが、今後の鶏肉輸入にいかに影響するかが注目される
が、一方では、過度に米国を刺激すれば、エビなどの対米輸出産品に対抗措置がとら
れる可能性があるとして、反米運動に慎重性を求める声も上がっている。


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