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フィリピン、欧州産豚肉の輸入を規制


【シンガポール駐在員　宮本　敏行　９月７日発】フィリピンは、相次いで豚コレ
ラが発生している欧州産豚肉の輸入を禁止または制限する動きに出ている。アンガ
ラ農業長官は８月14日、国際獣疫事務局（ＯＩＥ）がイギリスにおける豚コレラ発
生を発表したことを受け、同国産の生体豚、豚肉およびその加工品の輸入を一時的
に禁止する省令を公布した。また、併せて、フィリピンへの輸送途中にある豚肉の
差し止め措置も行っている。

　さらに、政府はこのほど、７月に豚コレラの発生が確認されたドイツ産豚肉およ
びその加工品の輸入制限を行うことも発表した。これにより、ドイツ産豚肉に関し
ては、豚コレラ汚染地域以外からの輸入のみが認められることとなった。この省令
では、ドイツで生産されたフィリピン向けの豚肉やその加工品は、①と畜後の検査
で豚コレラに感染していないと判断されたものであること、②豚コレラの非汚染地
域内で生産されたものであること、③非汚染地域内でと畜・加工されたものである
こと、④豚コレラワクチン非接種のものであることなどが規定されている。

　フィリピンは今年に入って、552トンのイギリス産豚肉を輸入しており、それら
は主にソーセージなど加工品の原料として使用されている。97年におけるイギリス
からの豚肉輸入は皆無であったが、98年には25トンが輸入されており、近年では増
加の傾向にある。一方、ドイツ産豚肉は、97年には70トンが輸入されたものの、98
年には25トンと減少した。

　先に農業省畜産局は、昨年フィリピンが輸入した食肉４万４千トンのうち、イギ
リス産豚肉は１割以下であるため、同国産豚肉の輸入禁止が直ちに国内の豚肉需給
に深刻な影響を与えることはないとコメントしていたが、ドイツでも豚コレラの発
生が確認されたことから危機感を強めているようだ。

　フィリピンにおける豚肉市況は、このところおおむね落ち着いており、畜産局に
よると、人口が集中するルソン島北部の９月上旬の豚肉卸売価格は、高級部位で１
kg当たり95～110ペソ（約238～275円：１ペソ＝2.5円）、その他の部位で70ペソ
（約175円）となっており、この１ヵ月間ほとんど変動はないという。なお、農家
販売価格も58～60ペソ（145～150円）を維持している。

　７月には、フィリピン養豚協会と全国養豚協会が、無税での飼料用トウモロコシ
輸入を求め裁判を起こして敗訴するという、養豚業界に陰を落とす出来事も起きて
いる。両協会の提訴は、同国が押し進める農水産業近代化計画の一環として公布さ
れた「あらゆる農業資材は無税で輸入できる」という内容の省令にのっとったもの
であったが、国内のトウモロコシ農家を保護する目的で却下された。このように、
最近の政策に不満を抱いていた養豚業界も、今回の規制については、評価している
ようである。

　政府は、豚の品種改良や疾病対策を念頭に置いた養豚農家の登録管理に動き出す
など、養豚業強化の方針を打ち出している。その矢先で起きた欧州産豚肉に係る豚
コレラ騒動は、同国の今後の養豚政策にも少なからぬ影響を与えるものと思われる。


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