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EU委員会、鶏卵の表示規則強化を提案
【ブラッセル駐在員 山田 理 9月13日発】EU委員会は9月7日、域内で一 般消費者向けに販売される鶏卵(輸入卵を含む)に対して、採卵鶏の飼養形態に関 する表示を義務付けることなどを提案した。 EUでは従来から動物愛護に対する関心が高く、畜産物生産に供される家畜・家 きんに対しても、無用なストレスや苦痛が与えられないよう保護することを目的と して、飼養管理等に関する基準が定められている。 採卵鶏に関しては、86年に各畜種を通じて初の動物愛護規則となる理事会指令 (86/113/EEC)が制定された。その後、規定が改廃される都度、内容が徐々に強化 されている。 99年7月に定められた現行の理事会指令(1999/74/EC)では、ケージ飼養に関し て、採卵鶏1羽当たり最低750平方センチメートルの確保などを義務付けたほか、 平飼いについても新たに飼養管理基準を設けている。 また、従前の理事会指令(88/166/EC)に基づくケージ飼養は、2003年1月まで に採卵鶏1羽当たり最低550平方センチメートル(従前は450平方センチメートル) にケージ面積を拡大することなどを条件に継続を認められた(ただし、この規格の ケージは、2012年以降使用を禁止される)。このため、しばらくの間は、さまざま な飼養形態により、鶏卵が生産されることが予想されている。 EU委員会のフィシュラー委員(農業/漁業/農村開発担当)は、今回の提案に 際して、「鶏卵の生産方法(採卵鶏の飼養形態)に対する消費者の関心が高まって いる中で、消費者が選択の権利を行使できるよう最大限の情報を提供するとした、 われわれの決意を表すものある」と述べた。また、99年7月に制定された採卵鶏の 愛護に関する理事会指令(1999/74/EC)を支援するものであるとも示唆しており、 採卵鶏の飼養形態を鶏卵に表示させることで、動物愛護の観点からより望ましい飼 養形態への移行を促す狙いがあるものとみられている。 なお、飼養形態を表す用語などの詳細については、明らかにされていないが、現 行の任意表示制度で用いられている「free range(平飼い)」、「cage production (ケージ飼養)」などを考慮して検討が進められる見込みである。 EUでは、牛海綿状脳症(BSE)が完全に終息しない中で、9月1日から牛肉 に対して原産国表示などが義務付けられた。遺伝子組み換え(GM)食品に関する 表示なども含め、主に食品安全性の観点から、消費者が食品を選択するために必要 な情報を食品表示に盛り込む方向で、改革が着実に進められている。 EUにおける動物愛護への関心の高さから考えると、飼養形態に関する情報も重 要な表示項目の1つとして、いずれは鶏卵だけでなく他の畜産物にも拡大していく 可能性は高い。
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