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タイ農業協同組合省、余乳問題の解決に奔走



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 3月29日発】タイ農業協同組合省はこのほ
ど、最近発足したばかりの新政権に対し、余剰生乳を加工するための粉乳処理工場
の建設費として、3億バーツ(約8億4千万円:1バーツ=2.8円)を速やかに拠出
するよう要請した。これは、同省が前政権に要請していた6億バーツ(約16億8千
万円)の半額に当たるもので、残り資金はアジア開発銀行から借り受けるとしてい
る。

 タイの99年の生乳生産量は前年比5.6%増の45万5千トンで、97〜98年に深刻化
した経済危機の影響を受けつつも、この5年間は増加傾向で推移しており、2001年
も同4〜10%の増加が見込まれている。タイでは以前から、各学校が夏季休暇に入
る期間に、学乳事業の一時中断による余乳の発生が大きな問題となっており、今年
も3月中旬から5月中旬にかけて、1日当たり約340トンの生乳が過剰になると試
算されている。こうした事態を打開するためにも、このプロジェクトの重要性は広
く認識されており、政府筋からはおおむね了承されているとされる。しかし、計画
の実現性が疑われるとして、全国経済発展委員会が難色を示していることから、工
場の建設着手までには、さらに時間を要することも考えられる。

 また、農業協同組合省は、新年度における学乳予算の増額も併せて要求している。
学乳事業ではこれまで、生徒1人当たり200ミリリットルの牛乳を年間200日供給し
てきたが、新たな計画では260日まで延長が可能で、工場が稼働すれば、学校が夏
季休暇中であっても、生徒がUHT牛乳(日本のLL牛乳に相当)を自宅で飲むこ
とができるとしている。同省は、これによって、1年間に5億4千万バーツ(約15
億1千万円)に相当する3億6千万個のUHT牛乳を輸入する必要がなくなるとし
て、これらの資金投入の必要性を重ねて訴えている。

 一方、政府は3月21日、農業協同組合省に対し、夏季休暇の期間に5億5百万バ
ーツ(約14億1千万円)の資金で18,700トンの生乳を購入することを許可した。買
い上げられた生乳からは、1億個のUHT牛乳が製造される予定とされる。

 また、政府は併せて、今年の脱脂粉乳の輸入割当を75,500トンから55,600トンへ
削減すると発表した。従来から、タイでは脱脂粉乳などを原料としてUHT牛乳が
製造されることも多く、このことがさらなる余乳増加の原因となっていた。この措
置は、こうした輸入粉乳由来の還元乳の生産を抑制し、国産生乳の使用頻度を高め
る効果を狙ったものと言える。

 さらに、政府は、脱脂粉乳などから生産された還元乳に「Fresh Milk」と表示す
ることを禁止することを検討しており、従来から生乳のみを使用していたフォアモ
ースト社やCP明治、ネスレなど大手乳業会社からは一様に歓迎の声が寄せられて
いる。また、政府は、1日に生産される約1,300トンの生乳のうち、大手乳業会社
に966トン、中小乳業会社に350トンの買い取りを義務付けているが、割り当てを履
行しない乳業会社も存在するとして、これらの監視も強めていくとしている。

 政府の一部には、粉乳工場の稼働や、現在の小学校1〜4年生を対象とした学乳
事業を、6年生にまで拡大することで余乳問題を根本的に解決できるとの楽観論も
あり、タイの余乳処理をめぐる情勢が好転しているとの見方もされつつある。


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