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アルゼンチンの遺伝子組み換え作物事情


【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 8月2日発】アルゼンチンは世界有数の
農産物輸出国であり、最近の穀物・油糧種子生産は6,000万トンを超え、90年代初
めに比べ倍増している。これは、国際的な農業関連資材産業のノウハウを取り入れ
るなど生産者の生産性向上努力に加え、遺伝子組み換え作物(GMO)などのバイテ
ク技術導入も寄与している。

 88年以降、外資系企業や国内研究機関がGMO導入に関心を示した。これを受け政
府は、91年に、GMOの許認可権限を持つ農牧庁への安全性評価の技術的助言機関と
して、農業バイオセイフティーに関する国家諮問委員会(CONABIA、以下コナビア)
を農牧庁内に設けた。コナビアは官民で構成され、国立農牧研究所(INTA)、国立
種子研究所(INASE)、農畜産品衛生事業団(SENASA)、国立ブエノスアイレス大
学などの国の機関やアルゼンチン種子協会(ASA)などの民間団体がメンバーとな
っている。

 コナビアは民間企業や国内研究機関から農牧庁に申請されるGMOに対し、農業環
境、農畜産物、公衆衛生の面から環境への影響や安全性の評価を行う。さらに同庁
市場部による市場調査結果も含め、コナビアが農牧庁長官に助言し、同長官が申請
されたGMOの商業化の是非を決定する。

 申請はGMO1品目につき1件とされ、書類審査で問題がない場合は、環境への影響
や安全性の評価試験が開始される。順序は、@実験・大気放出許可(実験室や温室
などでの試験許可)、A試験条件緩和許可(一般ほ場での試験許可)、B商業化許
可となる。コナビアは試験栽培から収穫、生産物処理まで試験全体を管理するが、
実際に試験をモニタリングし、家畜飼料や食料としての安全性を評価するのはSENA
SAで、商業化されたGMOを登録するのが INASEである。91〜2000年の上記@、Aの
許可申請件数は433件で、うちトウモロコシが約50%を占める。対象となる特性は
除草剤耐性が37%、その他は病害虫耐性などである。

 現在、農牧庁が商業化を許可しているGMOは、大豆(除草剤耐性)1件、トウモロ
コシ(除草剤、害虫耐性)3件、綿花(除草剤、害虫耐性)2件の6品目だけで、綿
花以外は全てEUも許可している(アルゼンチン産綿花のEUへの輸出実績はない)。

 民間データによると2000年の世界のGMO推定作付面積は4,400万haであり、1,000
万haに達する勢いのアルゼンチンは米国に次ぐGMO先進国とされる。GMOの作付比率
は、99/2000のトウモロコシ作付面積約360万haのうち約5%、大豆は約870万haの
うち約80%といわれ、大豆のGMO比率が際立っている。

 現時点では一部の取引を除き、GMOと非GMOの生産、流通過程での分別は特に行わ
れていないようであり、国内で表示を求める動きも今のところ目立ってはいない。
しかしながら、日本のスターリンクを代表とするGMOに対する関心が世界的に高ま
っている中で、今後の輸入国の対応が注目される。
お知らせ:来週は休刊とさせていただきます。次号は8月21日発行です。




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