ALIC/WEEKLY
【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 8月2日発】EU委員会は7月25日、遺伝子 組み換え(GM)食品および飼料に関する規則案を採択し、提案した。同提案では、 GM食品・飼料の流通段階すべてでの追跡可能性の確保、表示の義務付けなどを細 かく規定している。今後、EU理事会および議会で共同審議され、遅くとも2003年 には施行予定である。 EUでは、90年の理事会指令(90/220/EEC、2002年10月からは2001/18/ECに改正 予定)に基づきGM食品等の流通に関して承認申請が義務付けられている。98年10 月までに除草剤耐性大豆・トウモロコシなど延べ18のGMO(遺伝子組み換え作物) 品目が承認されている。人の健康や環境への悪影響が懸念されたため、それ以降承 認例は無く、14品目が承認待ちの状況にある。EU委員会では、承認再開に向けE U規則を強化することとし、本提案までに約1年間、加盟各国との調整を続けてい た。 提案の概要は次のとおり。 (追跡可能性) 生産から流通段階すべてにおいて、「GMOを含む、またはGMOから製造され る」食品および飼料すべてについて、入手先、販売先の記録を義務付ける。販売者 は、GMOの存在情報を販売先に伝達するとともに、5年間保存しなければならな い。なお、各国による監視・管理を同等にするため、サンプル検査方法の技術指針 は規則施行までにEU委員会が開発する。 (表示) 「GMOを含む、またはGMOから製造される」食品および飼料すべてについて、 その旨の表示を義務付ける。最終製品にGMによるDNAやタンパク質を含まない 食品(精製植物油など)も対象とする。また、GM物質が偶発的に含まれる場合、 含有率が1%以下であれば、表示義務を免除される。表示規則については、2年後に 見直す。 なお、GM飼料を与えた家畜から生産される卵、食肉、乳やGM酵素(キモシン) を使って製造されるチーズは表示義務の対象外となっている。 (未承認GM物質の偶発的混入) 未承認GM物質について、当該GM物質がEU科学委員会または、欧州食品機関 から環境および健康へ危害がないと評価されている場合に限り、含有率1%以下の 偶発的混入を認める。 (承認手続き) 米国のスターリンクの教訓を踏まえ、食品・飼料の両用に使われる可能性のある GMOの承認については、用途別には行わない。すなわち、両用に認めるか、全く 認めないかを決める。 承認に際しては、近々設立が予定されている欧州食品機関で、環境への悪影響な らびに人および動物の健康への安全性について、科学的危険度評価を行う。その後、 一般市民からの意見も踏まえ、EU委員会で承認の適否について提案し、加盟国に よる特定多数決で決定される。また、承認期限は10年で、10年毎に承認の更新が必 要となる。 なお、現在承認されているGMO品目については、規則施行から6ヵ月以内にサ ンプル検査方法を欧州食品機関に提出しなければならず、承認期限(承認日から10 年間)が同様に適用される。
元のページに戻る