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【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月3日発】中国の企業グループの代表団が7月 20日、豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州南部の小都市を訪問し、当地に 大規模牧場と飲用乳製造工場を新たに建設して、そこで生産するUHT牛乳を中国 に輸出する計画に着手すると発表した。発表にはNSW州農業省の大臣らも同席し、 中国企業の投資を歓迎するとともに、豪州側も最大限の協力を行うと約束した。 今回、NSW州南部の農業地帯リベリナ地方にあるクータマンドラ市を訪れたの は、中国のシェンロン企業グループの代表団である。代表団のリーダーであるチェ ン部長は、同市の周辺に搾乳牛1,500頭規模の牧場と、1日50トンのUHT牛乳(2 50CCパックで20万本)を製造できる近代的な飲用乳工場を新たに建設し、当該製品 をすべて中国に航空便で輸出する計画に着手すると発表した。 この計画に対し、シェンロン企業グループが総額1千万豪ドル(約6億3千万円:1 豪ドル=63円)の投資を行うほか、NSW州農業省とクータマンドラ市は、必要な 用地の買収や技術支援などの面で最大限の協力を行うとしている。チェン部長、ブ レイブルック市長、アメリー農業大臣の3者は趣意書に署名した後、早速、近在の 農場候補地を視察した。 搾乳牛1,500頭規模の牧場が軌道に乗れば、1日約27トン(平均18リットル/頭) の生乳生産が可能となるが、中国側が目標として掲げた50トン/日には不足する。 中国側は、この不足分を地元の酪農生産者から購入したいとしている。 チェン部長によると、中国では近年、消費者の需要が従来の還元乳から生乳を使 用した牛乳にシフトしつつあり、この結果、UHT牛乳などの飲用乳が大幅に不足 しているという。 一方、NSW州では、昨年7月に実施された生乳流通の完全自由化以来、飲用向 け価格が大幅に下落し、多数の酪農経営者が離農の瀬戸際に立たされている。 このため、今回の計画は、両者にとって渡りに船のタイミングで持ち上がったも のと言えよう。現在のところ、中国側は具体的な生乳の購入価格を明らかにしてい ないが、NSW州における飲用向け生乳の極端な供給過剰状態に一石を投じ、需給 を引き締めると期待されている。 豪州は、2000年に約8万7千トンの飲用乳を輸出したが、その内訳は、シンガポー ル(2万3千トン)、香港(2万2千トン)、フィリピン(1万トン)で、中国(4千7 百トン)はそれに続く第4位であった。仮に、今回の計画が実現すれば、1日50ト ン、年間約1万8千トンのUHT牛乳が中国に輸出されることとなり、中国は一挙に 飲用乳輸出の大きなシェアを占めることになる。 さらに、今回の計画で特筆すべきことは、中国側が主導して立ち上げたことであ る。今回の事業が成功し、かつ、中国国内の飲用乳不足が今後も続くとすれば、新 たな計画が持ち込まれる可能性もあるため、関係者はその成り行きに注目している。
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