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マレーシア政府、鶏卵の価格統制の可能性を示唆



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 8月2日発】マレーシア国内通商・消費大臣
はこのほど、5月下旬に行われた生産者団体による鶏卵の指導下限価格の引き上げ
以降、価格の高騰が続いているとして、鶏卵を価格統制品に指定する可能性を示唆
した。同国では、97年後半に顕在化した経済危機を経て、食料品をはじめとする生
活必需品の価格上昇の傾向が続いており、消費者保護の目的で物品の上限価格を定
める価格統制制度の効果的な運用が期待されている。畜産物に関しては、とりわけ
需要が高い鶏肉および練乳が価格統制品に指定されており、鶏卵が指定されれば三
番目の品目となる。

 マレーシアでは、1日当たり約1,600万個の鶏卵が生産され、そのうち、約230万
個が隣国のシンガポールに輸出されている。かつてはインドネシアへも輸出されて
いたが、長期にわたる同国経済の不振やルピア安の進行で現在はほとんど輸出され
ていない。99年のマレーシアにおける年間1人当たりの鶏卵消費量は19kgとアセア
ン諸国の中でも突出して多いものの、生産過剰の影響や輸出の減少によって市場で
の荷余り感が顕著となっていた。

 このため、マレーシア畜産生産者連盟(FLFAM)の全国鶏卵価格委員会は、
生産過剰による鶏卵価格の低迷から生産者を救済する目的で、政府の承認の下、5
月28日から鶏卵の卸売りおよび小売りの指導価格の引き上げを行うことを決定した。
FLFAMによれば、当時は、農家販売価格が生産コストを下回る状況が10ヵ月間
も続いており、鶏卵生産者は鶏卵1個当たり1〜1.5セン(約0.3〜0.5円:1セン=0.3
円)の損失を強いられている状況を説明している。この措置で、7種類のグレード
全てが従来より2セン(約0.6円)引き上げられ、最上級のAA規格の卸売価格およ
び小売価格がそれぞれ19.5セン(約6.2円)、21.5セン(約6.9円)、最下級のF規
格が14セン(約4.2円)および16セン(約4.8円)とされた。

 しかし、その後、価格は上昇に転じ、5月下旬と比較して7月下旬には1個当た
り平均5.3セン(約1.6円)上昇したと報告されている。生産者団体はこの原因を、
鶏卵価格の低迷により採卵鶏の淘汰が進み、供給量が減少したためとしているが、
国内通商・消費省は、今後のフェスティバル・シーズンに向けて意図的に高水準の
価格を維持しようとしているとして、一層の価格上昇を望む声をけん制する動きを
見せている。同大臣は、鶏卵価格が充分に上昇した現在、「コスト割れ」を名目に
生産者が高価格を維持しようとすることは好ましくないとして、価格を適正な水準
に引き下げる努力を行うよう全国鶏卵価格委員会に指示したとされる。また、同委
員会が価格引き下げの努力を怠った場合には、消費者を保護する目的で鶏卵を価格
統制品に指定し、自らの管理化に置くとしている。

 同省は、最終的な判断には今後も生産者団体などと議論を重ねる必要があるとし
ているが、インド産牛肉のように潤沢な在庫に見合う適正な価格形成が行われてい
ない例が見られることから、鶏卵を価格統制品に指定する可能性を示唆することで
他の食品の価格上昇を抑制する効果も意図しているものと思われる。


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