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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 12月6日発】ブラジルでも有数の肉牛生 産州であるリオグランデドスル州での口蹄疫発生を受け、2001年5月から同州産の 生鮮牛肉の輸入を中止していたEUは、10月に実施した家畜衛生調査結果に基づき、 12月1日から同州産の骨抜き熟成生鮮牛肉の輸入を解禁することを決定した。また、 同州産の偶蹄類家畜とその食肉をブラジル国内の口蹄疫清浄地域へ搬出できるよう になった。今回のEUの決定により、同州産牛肉のチリや中東諸国向け輸出の再開 への可能性も高まっている。 ブラジル南部畜産圏を形成するリオグランデドスルとサンタカタリナ2州は、98 年に国際獣疫事務局(OIE)によりワクチン接種清浄地域に認定され、さらにワ クチン不接種清浄地域の認定を求めて2000年5月1日からワクチン接種を中止して いた。しかしながら2001年5月リオグランデドスル州で口蹄疫が発生し、同州はワ クチン接種に踏み切ったため、同州産の牛肉は、EUをはじめ主要な輸出市場を失 っていた。 2000年にOIEによりワクチン接種清浄地域に認定された1連邦地区と南・中西 部5州に続き、2001年には東部畜産圏を形成するマットグロッソドスル、トカンチ ンス、リオデジャネイロ、エスピリトサント、バイア、セルジーペの6州がワクチ ン接種清浄地域に認定され、清浄地域が大幅に拡大し、現在ブラジルでは、約1億 6千万頭の肉牛の8割以上が清浄地域で飼養されている。ブラジル政府は衛生ステ イタスの向上と、99年1月の自国通貨レアルの切り下げで輸出競争力を増したこと を背景に、今後の牛肉輸出に大きな期待をかけている。 最近、パラチニデモラエス農相が雑誌記事のインタビューにおいて、2億2千万 haの牧草地で健康的に育った肉牛の肉を「ブラジリアンビーフ」の商標で国内外に 精力的に売りこみ、2002年には枝肉ベースで約60万トン、輸出額にして約10億ドル を目指しており、そのためには現在5,000トンのEU向け高級牛肉ヒルトン枠の拡 大や、NAFTA市場、特に米国への生鮮牛肉輸出の実現に努力する必要があると 回答している。 最近、有機牛肉生産プロジェクトが各地で旗揚げされており、これらは「緑の肉 牛」生産として知られている。謳い文句から見れば牧草肥育、ヘルシーな牛肉生産 に尽きるが、低コスト生産も生産者には魅力のようである。従来の放牧のみでは仕 上がりが遅く肉質もよくなく、またフィードロット肥育では謳い文句が生かせず、 初期投資も莫大である。そこで「緑の肉牛」生産では放牧肥育を主体に乾期に補助 飼料のみを給与するセミフィードロット肥育が採用されており、ゼブー生産者協会 の本部があるミナスジェライス州のプロジェクトでは、生体重で250kg、枝肉をお おう皮下脂肪が3mmに達した時点、おおむね18〜30カ月齢の肉牛を出荷することを 推奨している。多汁性で柔らかく風味の良い若牛の肉を生産することに重点が置か れており、生産コストは米国や豪州の半分と試算されている。 最近のブラジルの肉牛生産はかなり戦略的に行われている印象があるが、生産者 の中には宣伝だけが立派で、世界の求める肉質とは何かを生産者に明確に示す努力 がなされていないという批判もあるようだ。
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