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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 12月6日発】フィリピン農業統計局によると、 同国における2001年第3四半期までの農業生産額は、家きん部門を筆頭に畜産業が 好調を維持したことなどにより、前年同期比で2.9%増加した。畜産は農業生産額 の約3割を占め、同国における重要な基幹産業の1つであると言える。 同国において、農業、特に畜産業は、97年の経済危機により停滞した経済を回復 に導くために大きな役割を果たしてきた。同国の農家はいまだに零細経営が主で、 特に地方の貧困の原因となっていることから、政府は、99年から2004年の期間、Gi nintuang Masaganang Ani(GMA)プログラムと呼ばれる畜産発展計画を策定、 推進している。この計画の下では、@育種改良とともに家きんを含む家畜の飼養頭 羽数を10%増加する。A農家所得に対する畜産業の寄与率を3割に引き上げる。B 地方における畜産生産額を毎年3.5%引き上げるとした目標が掲げられている。 今回公表された畜産物の生産額を分野別に見ると、家きん部門が前年同期比で5. 1%増の270億ペソ(約675億円:1ペソ=2.5円)、家きんを除く他の畜産部門が同 2.9%増の261億ペソ(約653億円)で、昨年以降、両者は肩を並べつつも家きんが その他の畜産をやや上回る状況が続いている。家きん部門の中では、全体の73%を 占める鶏肉が6.4%増加して196億ペソ(約490億円)になったのをはじめ、あひる、 鶏卵およびあひる卵がそれぞれ2.9%増の13億ペソ(約33億円)、1.0%増の52億ペ ソ(約130億円)、4.0%増の9億ペソ(約23億円)といずれも前年同期を上回った。 鶏肉は豚肉とともに国民に最も好まれており、近年は養鶏業界の統合が急速に進ん でいるとされる。特に最近の養鶏業の発展には、同国の中部に位置するビサヤ地方 や南部のミンダナオ島におけるインテグレーターの成長が大きく貢献していると言 われる。 一方、その他の畜産分野の78%を占める豚は、需要の増大によりと畜が増加した ことから、4.4%増加して203億ペソ(約508億円)となっている。水牛も政府の振 興策が奏効し飼養頭数の増加が図られるとともに、年齢によると畜制限が緩和され たため2.5%増の11億ペソ(約28億円)と健闘した。また、酪農についても、White Revolutionと呼ばれる生乳増産・消費振興策の推進によって6.8%増の4千万ペソ (約1億円)とかなり増加している。同国の酪農は規模が極めて小さいため、振興 策の浸透いかんによっては今後しばらく比較的高水準の発展が見込まれる。しかし、 肉牛は3.4%減の39億ペソ(約98億円)、また、山羊も2.0%減の8億ペソ(約20億 円)へ落ち込んでいる。 なお、農業統計局は、生産額が上昇するかたわら、農家販売価格は農畜産物の平 均で2.3%、作物分野に限っては7.4%も安くなっており、好調な生産実績とは裏腹 に農家の収益状態が必ずしも良好ではない点も指摘している。この傾向は昨年から 続いているが、農畜産業にGDPの2割を依存する同国経済を再び停滞させる要因 になることも考えられ、政府による早急な対策が期待されている。 モンテメーヤー農務長官は、今後は年末需要も見込めることから、良好な天候に 恵まれれば第4四半期も農畜産業生産のさらなる伸びは期待できるとして、3.0〜3 .5%という今年の成長目標は十分に達成可能であるとしている。
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