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ブラジルの牛肉輸出、2001年1-4月期は大幅増



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 7月5日発】ブラジルの2000年の牛肉輸
出量(生鮮肉と加工肉の枝肉換算値の合計)は55万4千トン、前年比2.4%の増加で、
99年に比べ、減少した加工肉の輸出を生鮮肉が埋め合わせた。こうした中で、ブラ
ジルの2001年1−4月期の牛肉輸出量(枝肉ベース)は、加工肉が約9万9千トンと
前年同期比-0.12%微減したが、生鮮肉が10万6千トンと前年同期比55%の大幅増と
なり、輸出金額も約1億8千万ドル、前年同期比23%と過去に例のない伸びとなった。
生鮮肉輸出の太宗を占める骨なし生鮮肉のチリ、イギリス、サウジアラビア、エジ
プト、イランへの輸出が顕著に増加したのがこの期の特徴である。

 最近の、ブラジル産食肉の輸出増加の背景には以下の理由が考えられている。

@ 牛海綿状脳症(BSE)問題と口蹄疫の発生で、EU域内産生鮮牛肉の消費が控
 えられ、輸入品にシフトし、南米が重要な供給地域となったこと、さらにアルゼ
 ンチン,ウルグアイでも口蹄疫が発生したため、ブラジルが供給国として優位に
 立ったこと。

A 従来EU産食肉を輸入していた国々が家畜衛生の観点から輸入を規制したため、
 ブラジル産食肉にシフトしたこと。

B 隣国アルゼンチン経済の不振などの影響で2001年に入りブラジル通貨レアル安
 が続いてた結果、食肉の輸出価格が下がったこと。(特にサウジアラビア、エジ
 プト、イランなど中東への輸出が増加している。)

C 2000年に口蹄疫ワクチン接種清浄地域に認定された1連邦地区と南・中西部5
 州に続き、2001年は東部畜産圏の6州が同じステイタスを認定され、清浄地域で
 飼養される牛が、総飼養頭数の85%を占めるに至り、家畜衛生に対する対外的な
 信用と国内食肉産業の輸出に向けてのインセンティブが高まったこと。

 こうした上向き要素に加え、ブラジルの畜産界は、2001年は、家畜飼養頭数が増
加し、生産性の向上とあいまって食肉生産が増え、輸出余力も高まると期待してい
る。

 しかし、不安要素もないわけではない。

 リオグランデドスル州で発生している口蹄疫は21件と報道され、未だに終息宣言
はなされておらず、輸出規制の対象を同州のみとする方向でEU、ロシア、サウジ
アラビアと輸出解禁交渉が進展しているが、一方で中国がブラジル産食肉を一時的
に禁輸した。これはWTO加盟に向けて今までの二国間協定を見直すためといわれ
ている。

 こうした輸出に係る問題に加え、国内では、電力を水力発電に依存しているため、
降雨不足から電力不足が深刻となっており、食肉処理加工部門などの操業時間短縮
なども懸念されている。


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