ALIC/WEEKLY


スコットランドのO157対策委、報告書を公表



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 7月5日発】スコットランドの大腸菌O157に
関する対策委員会はこの程、報告書を取りまとめ公表した。報告書には、状況分析
とともに、予防のための勧告が多数盛り込まれている。
  
 報告書のうち、主に畜産および畜産物に関する要約の抜粋は以下のとおり。
  
(総論)  
・ 大腸菌O157は牛、めん羊の腸に普通に認められるが、人に感染することはま
  れである。
・ 手洗いの励行が簡単で重要な予防法である。
・ 衛生上の警告を定期的に繰り返すことが必要である。
・ 大腸菌O157の人への感染の主な原因は牛とめん羊であり、その新鮮なふん便
  が、O157を感染させる危険性が最も高い。
・ 年齢の低い子供のO157感染は最も危険である。
・ 現在の感染例では、食品が原因である場合よりも、環境(動物のふん便との接
  触、水の汚染など)が原因である場合が多い。
  
(調査)
 的を絞った、組織的な調査が必要である。また、感染経路を確認することも必要
である。
・ 検査所および臨床記録の確認、改善
・ 人、食品、動物、環境の感染源の総合的調査
  
(家畜飼養)
  今のところ、O157を家畜から排除することはできないことから、以下のような
認識と予防策を取ることが必要である。
・ すべての牛、めん羊がO157を排出すると想定すべきである。
・ 農民は、家畜(牛、めん羊)をO157から防ぐことはできない。
・ 農民および雇用者は家畜のふん便、たい肥による危険性を認識すべきである。
・ 今のところ、動物のO157保菌率を減らす直接的方法、ワクチン、飼料などの
  手段は無い。
・ 動物のサンプル検査は危険度分析としては価値が乏しいが、特別な事例を調査
  するには役立つ。(O157を見つけても、明快な対処法は無い)
・ より長期的な調査、保菌率を減らす方法についての研究が必要である。
・ O157は新しい病気であるため、過去に認められた個人の免疫力を当てにして
  はならない。
・ 農民は家族への危険に注意を払うべきである。(作業着は家庭、車では着ない
  こと、家畜と使役犬を家庭、車から隔離すること)
・ 農民向け指導書を改定すべきである。
・ 農場廃棄物管理計画(スラリーの適正管理など)の活用を推進すべきである。
  
(草地のキャンプ地等への利用)
 キャンプ地などリクリエーションとして、草地を利用する場合、危険性を減らす
ための次の処置が必要である。
・ 使用前3週間、使用中に家畜を入れないこと
・ 家畜を退去させた以降、できるだけ早く目に見える家畜のふん便を除去するこ
  と
・ 使用前の芝刈り
・ 飲食前の石鹸を使った手洗いの励行など、特に5歳未満の子供には十分指導す
  ること
  
(食品)
 食品はいまだに有力な感染源であり、近年の諸対策に加え、次の対策が必要であ
る。
・ 加熱殺菌されていない生乳から製造されるチーズについては、(殺菌乳から製
  造されるチーズと区別がつくように)消費者向けに生乳が原料である旨を明示、
  および追跡可能性の改善
・ イングランド、ウェールズにおいても、スコットランドと同じく、販売される
  飲用乳およびクリームの加熱処理を義務付け
・ ひき肉製品の十分な加熱調理


元のページに戻る