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生産性向上と土地利用の相関関係を調査(豪州)



【シドニー駐在員 野村 俊夫 7月5日発】豪州農業資源経済局(ABARE)
は、肉牛・羊・穀物の各部門における生産性の向上が豪州の農業用地の利用に及ぼ
す長期的な影響を調査し、このほど、その結果を公表した。これにより、肉牛部門
の生産性が競合国の同部門や国内の他部門を上回って向上した場合、羊部門の土地
利用が大幅に減少するなどの相関関係が明らかにされた。

 この調査は、ABAREが上記3部門の過去における生産性の動向と土地利用の
変化に関するデータを基にして、それぞれの部門が2010年までに競合国の同部門や
国内の他部門に比べて10%高い生産性の向上を成し遂げた場合に、現在の土地利用
形態がどのように変化するかを推定したものである。

 別表はこの結果を取りまとめたものであるが、ここでは豪州の農業用地全体を野
草地域(降雨量が少ない耕作不適地)、小麦・羊地域(降雨量により小麦の作付けま
たは羊の放牧を行う地域)、多雨地域(毎年、耕作を行える程度の降雨量がある地
域)の3種類に区分している。表中各部門の基準予測面積は、それぞれの生産性が、
競合国の同部門や国内の他部門と同程度にしか向上しない場合に想定される土地利
用面積を示している。

この基準予測面積はほぼ現在の土地利用の姿を反映したものであるが、これを見
れば豪州の肉牛生産が極めて広大な土地を利用している実状が分かる。

さて、ABAREは、上記3部門が2010年までにおのおの単独で10%の生産性向
上を成し遂げた場合の土地利用の変化を試算しているが、その結果は同表に利用面
積の変化率で示されている。肉牛部門を例にとると、同部門が10%の生産性向上を
達成した場合、既に2億4,700万ヘクタールもある野草地域の利用面積がさら
に34%も増加するが、羊部門の生産性が向上するとこれが19%減少するとされてい
る。

 また、肉牛部門の生産性向上は羊部門による野草地域の利用を皆無とし、逆に羊
部門の生産性向上はこれを55%も増加させるなど、野草地域の利用は各部門の生産
性の動向によって大きく変化することが示されている。豪州の農畜産業は輸出依存
度が高く、常に国際競争にさらされる宿命を負っているが、輸入国の側から見れば、
各部門の生産性の動向が土地利用に大きな影響を及ぼすという研究結果は興味深い
ものがある。

各部門の生産性向上が土地利用に及ぼす影響   (単位:千ha)
    野草地域 小麦・羊
地域
多雨地域 合計
肉牛部門
 基準予測面積 247,074 29,450 15,685 292,209
 肉牛向上 34% 20% ▲1% 30%
 羊向上 ▲19% ▲9% ▲2% ▲17%
 穀物向上 ▲4% ▲10% ▲10% ▲5%
羊部門
 基準予測面積 83,319 32,669 7,715 123,703
 肉牛向上 ▲100% ▲17% 3% ▲72%
 羊向上 55% 7% 3% 39%
 穀物向上 11% ▲5% 1% 6%
穀物部門
 基準予測面積 313 17,525 1,397 19,235
 肉牛向上 0% ▲1% ▲3% ▲1%
 羊向上 0% 1% 7% 1%
 穀物向上 22% 25% 1075 31%
資料:ABARE


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