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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 6月21日発】先にEU委員会から提案されて いた牛肉価格・需給対策が、6月19日に開催されたEU農相理事会において修正の 上、ようやく承認された(当初の提案内容については、海外駐在員情報第474号参 照)。 EU委員会フィシュラー委員(農業・農村開発・漁業担当)は、今回の決定につ いて「この決定により、粗放的飼育方法が推進され、将来的にEUの牛肉需給バラ ンスが回復することを期待したい。(牛海綿状脳症問題の再燃により)牛肉の消費 は依然低迷しており、牛肉輸出市場も相当部分が閉鎖されている現状では、これら の対策が必要不可欠である。また、現在、豊富な草地で放牧されている雌牛が、20 01年の後半にはと畜されると見込まれるため、2001年後半期の牛肉生産過剰量は30 〜50万トンに上るだろう。消費はおそらく2年間は元に戻らないとみられ、輸出も 制限される中で、数年後に介入買上在庫を放出するための余地を作るために、今回 の対策で牛肉生産を減少させなければならない」とコメントした。 今回の決定の概要は次の通り。 1 粗放的生産の奨励 特別奨励金および繁殖雌牛奨励金の申請頭数の飼養密度制限を、現在の飼料畑 1ヘクタール当たり2家畜単位(LU)以下から2002年には1.9LU以下、2003 年以降は1.8LU以下に引き下げる。 2 特別奨励金の交付上限頭数の設定 これまで加盟国の裁量で変更または設定しないことが可能であった農家1戸当 たりの交付上限頭数(90頭)について、原則として、全加盟国での適用を義務付 ける。ただし、環境・雇用面に配慮した農村開発政策としての変更等は引き続き 認める。 3 特別奨励金の国別交付上限頭数の削減 牛肉の生産増加を抑制するため、97〜99年の交付実績等に基づき、2002〜2003 年について、国別交付上限頭数を削減・再設定する。 特別奨励金の国別交付上限頭数 (2002〜2003年)
国 名 | 頭 数 |
ベルギー デンマーク ドイツ ギリシャ スペイン フランス アイルランド イタリア ルクセンブルク オランダ オーストリア フィンランド スウェーデン イギリス |
228,787 |
4 繁殖雌牛奨励金に未経産牛飼育義務付け 2002〜2003年に限り、繁殖雌牛奨励金の交付要件として、申請頭数の15%以上 40%以下(現在は20%以下(下限なし))の未経産牛飼育を義務付ける。この結 果、奨励金申請可能頭数が減少することとなり、(対象外となる繁殖雌牛のとう 汰・減少により)子牛ひいては牛肉の生産を減少させる。ただし、申請数が14頭 未満の農家は除外する。また、口蹄疫で頭数の減少しているイギリスでは、2002 年は要件を免除、2003年は5%以上とする。 5 繁殖雌牛奨励金国家保留分の再交付停止 全家畜の移動なしに未使用の奨励金権利を移動する場合に、その一部が国家に 返還されることとなっているが、同権利の再交付を、2002〜2003年の間停止する。 ただし、口蹄疫で頭数の減少しているイギリスについては、2002年は免除する。 6 通常介入買上の限度数量の引き上げ (コスト高のセーフティーネット買上を回避するため、)2001年の通常買上の 限度数量を35万トンではなく、50万トンとする。
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