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【シンガポール駐在員 小林 誠 6月21日発】カンボジアでは、農民からの強 い要望により、タイ国境の1県を除く国内各県からプノンペン首都圏への生体豚の 移動が解禁され、豚肉消費が回復したことに伴い、生体豚の価格が大幅に高騰し、 移動禁止前の価格を上回って推移している。しかし、同国農林水産省は、国内には 十分な頭数の豚がいるため、外国からの輸入を解禁するつもりはないとしている。 今年1月、フンセン首相は、タイから輸入された生体豚が疾病に感染していると して、生体豚と豚肉の輸入および国内各県からのプノンペン首都圏への移入を禁止 していた(海外駐在員情報第469号参照)。輸入豚は、オーエスキー病に感染して いるとの疑いをもたれていたもので、同国では知識の不足から、本病が人にも感染 するのではないかとの誤解が生じ、豚肉の消費が著しく減少することとなった。 なお、輸入豚が同病に感染していることが明らかになった場合には、国内法によ りと畜処分されることになっていた。しかし、同国には病性鑑定を行える機関がな いため、タイからの検体は豪州の検査機関で検査され、結局はシロと判定された。 今年のカンボジアは、例年よりやや早い5月上旬から雨期に入っているが、雨期 の5ヵ月間、淡水魚資源の保護・養成を目的として河川での漁獲を禁止しており、 農林水産省漁業局では、同国を縦貫するメコン川の要所に500名を配置して監視し ている。淡水魚は同国民にとって、豚肉、鶏肉と並ぶ重要なたんぱく源であること から、漁獲禁止期間にも豚の移動禁止措置を継続すれば、同国の人口1,200万人の 約3割が集中するプノンペンでの食料需給に重大な支障をきたす恐れがある。 カンボジアの豚の飼養頭数は約198万頭(2000年末現在)であり、カンダー県な どプノンペン市周辺の4県の養豚は同市への供給を主体に行われている。同国では、 冷蔵施設の普及が行き届いていないため、周辺県で生産された豚は同市内に3ヵ所 あると畜場で処理され、その日のうちに売り切る方法がとられている。 プノンペンの生体豚の価格は、今年1月の移動禁止措置前には体重1s当たり3, 300〜3,500レアル(約102〜109円:100レアル=3.1円)であったものが、4月には 同2,200レアル(約68円)程度まで下落しただけでなく、ついにはこの価格水準で も販売不可能な状態となり、主に庭先での養豚を貴重な現金収入源としている小規 模農家の不満が高まっていた。 今回の移動禁止措置の解除を受けて、生体豚の価格は急速に回復しており、6月 上旬の段階で、地方市場の場合で体重1s当たり2,800レアル(約87円)、プノン ペン市の場合で同3,000レアル(約93円)となっている。なお、国内の移動は解禁 されたものの、輸入禁止は解除されていないことから、今後も上昇が見込まれてい る。
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