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【シンガポール駐在員 小林 誠 3月15日発】ベトナム農業・農村開発省(M ARD)は、昨年約1万2千トンだった豚肉の輸出を、2005年までに7万トン、20 10年には14万トンにまで伸ばすことを目標として、家畜生産・輸出ユニオンの活動 を強化する方針を表明した。この目標を達成するため、MARDでは、香港やロシ アなど、同国の伝統的市場のほかに、アジア市場への輸出を拡大していきたいとし ている。 豚は、ベトナムの畜産にとって最も重要な家畜であり、大規模な養豚場以外にも、 ほとんどの農家が3〜4頭程度を飼養し、小規模農家にとって貴重な現金収入源と なっている。2000年の同国の豚飼養頭数は約1,950万頭であったが、MARDでは、 これを2001年に2千万頭、2005年に2,400万頭、2010年には3千万頭にまで増頭し たい意向である。また、豚肉生産量についても、2000年に約142万トンであったも のを、2005年に200万トン、2010年には300万トンまで増大させたいとしている。 MARDでは、このような豚肉生産量の増大を図るためには、国内消費の拡大も さることながら、輸出振興が不可欠であるとしている。2000年の同国の豚肉輸出量 は1万2,200トンであり、輸出相手国は、香港(8千トン)、中国(2千トン)、 ロシア(1,500トン)などとなっている。MARDでは、2001年の輸出目標をほぼ 倍増の2万3千トンとしているが、今年に入って越露間で合意された新たな支払方 法の導入によって、ロシア向けの輸出数量が1〜2万トン増加することによって達 成し得るとしている。また、シンガポールも2010年までには、同国の国内消費量の 10〜20%に相当する約2万トンをベトナムから輸入したい意向と伝えられており、 MARDでは大幅な輸出需要増を見込んでいる。 一方、ベトナム産の豚枝肉は、特に旧北ベトナム地域のものについては、多産で はあるが脂肪の多い、在来のモンカイ種の血を引くものが多いため、脂肪の含有量 が高く、国際的な取引基準とされる赤肉割合53〜57%を下回るものが大半である。 このため、輸出基準を満たす豚肉は、国内生産量の約6%程度にすぎない。豚肉の 市場価格は、国内市場については、部位や脂肪の量にかかわりなく1s当たり約1 万8,200ドン(約144円:1千ドン=約7.9円)となっており、このことが赤肉割合 の高い豚肉生産を推進する障害となっている。これに対して、輸出価格(FOB) は同2万2,600ドン(約179円)と、国内市場向けのものよりも約40%高くなってお り、肉質改善のインセンティブになるとみられる。 また、国内には輸出基準を満たす加工処理施設が22ヵ所(うち3ヵ所がベトナム 畜産公社(VINALIVESCO)で年間1万トンを処理)しかなく、早急な拡充が必要と されている。この点について、MARDでは育種改良、飼養管理技術の改善によっ て、同国の豚の肉質改良を行うとともに、国内外の資本誘致によって、加工処理施 設の改善を行い、輸出競争力を高めていきたい考えである。 ベトナムでは、ドイモイ(刷新)政策の導入により、国営企業の民営化など大幅 な体制改革が行われており、畜産分野でも、97年に国営企業55社が統合され、VINA LIVESCOが設立された(現在、傘下36社)。生産振興のための土地利用税の免税措 置など、投資促進策はとられているものの、頻繁な制度改正など外資が算入しにく い面が多く、MARDやVINALIVESCOが今後どのように増産を図っていけるのか、 その手腕が注目される。
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