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豪州連邦政府が酪農補償の追加実施を決定



【シドニー駐在員 野村 俊夫 5月24日発】豪州連邦政府は5月21日、昨年7
月の酪農乳業制度改革によって厳しい経済的損失を被った酪農生産者を対象に、総
額1億4千万豪ドル(約91億円:1豪ドル=65円)の追加補償を行うと発表した。
この補償は、改革と併せて実施された総額17億8千万豪ドル(約1,157億円)の大
型補償パッケージ(「畜産の情報」海外編2000年11月号特別レポート参照)に新た
に上乗せされることになるため、酪農生産者団体などは一様に歓迎している。

 今回の施策は、今年1月に豪州経済資源開発局(ABARE)が公表した「酪農
乳業制度改革の影響実態調査」の結果を踏まえたものとされており、その内訳は飲
用向け価格大幅低下の影響を受けた生産者に対する追加補償が1億豪ドル、これま
で補償対象にならなかった者に対する新規補償が2千万豪ドル、酪農に依存する地
域社会への追加補償が2千万豪ドルとなっている。

 ABAREの実態調査では、改革後に飲用向け価格が大幅に低下したため、飲用
向け比率の高い生産者ほど多大な経済的損失を被ったことが示された。このため、
今回の追加補償の第1は、飲用向け比率が35%を超える者を対象としており、45%
を超えた場合には一律1リットル当たり12豪セント(約8円)の飲用向け補償金が
追加支給される。これにより、州平均の飲用向け比率が45%を超えていたニューサ
ウスウェールズ州、クインズランド州や西オーストラリア州では、当初の飲用向け
補償金である1リットル当たり46.23豪セント(約30円)に、上記の追加支給が行
われる事例が増加するとみられている。

 第2は、これまで補償対象にならなかった者の救済に充てられる。例えば、酪農
場を他者にリースしていた所有者(酪農引退者が主体)については、補償金の受給
資格が認められておらず、借用者が補償金を受領した後に離農してしまい、働き手
を失った上に酪農場の資産価値も大幅に下落して途方に暮れるというケースも見ら
れた。このため、今回の施策では、全収入の50%以上を酪農場のリース料から得て
おり、かつ、この額が20%以上減少した酪農場の所有者にも補償金の受給資格を与
えるとの見直しがなされた。

 第3は、地域補償の拡充である。酪農廃業の増加に加え、大手乳業メーカーが一
部の工場をクインズランド州からビクトリア州に移したこともあって、地域によっ
ては深刻な経済的影響を被っており、この対策は急務とされている。

 一方、今回の連邦政府の施策に対し、改革実施から約1年も経過して既に多くの
酪農生産者が廃業を余儀なくされたこの時期になって追加補償を打ち出すのは、今
年中に予定されている連邦総選挙への対策ではないかという批判も出されている。
事実、相次ぐ規制緩和や合理化の推進によって発展から取り残された農村部居住者
や中小企業関係者などは、連邦政府(自由・国民党連立)への批判を強めており、
次回の選挙は相当厳しいものになると予想されている。こうした中、連邦政府は今
回の決定により、酪農対策に非協力的な各州政府(労働党)に批判の矛先を向けさ
せる意図もあったとされている。酪農を含めた農業政策が次回選挙のカギを握ると
も言われており、今後の動向が注目される。


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