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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 5月24日発】フィリピン農業統計局が公表 した今年第1四半期の農業生産額は、穀物、畜産物、家きんおよび水産物の主要4 分野の生産がそれぞれ増加したことから、前年同期比2.4%増の642億ペソ(約1,66 9億円:1ペソ=2.6円)となり、引き続き好調を維持した。分野別の伸び率はそれ ぞれ、穀物1.6%、畜産物2.6%、家きん4.4%および水産物3.0%となっている。モ ンテメーヤー農業長官は、農業生産が好調であることの背景として、良好な天候が 続いたこと、政府によって改良が進められた優秀な品種の使用が広まったこと、農 産物の生産基地で、紛争が続いていたミンダナオ島における平和維持活動が成果を 上げたことなどを挙げている。また、エコノミストによれば、こうした順調な農業 生産が年間を通して維持できれば、国内総生産(GDP)は2.5〜3%の成長率が期 待できるとしている。 分野別に見ると、畜産物の生産額は前年同期比2.6%増の87億ペソ(約226億円) となっており、豚および水牛のと畜がそれぞれ3.9%、4.2%増加したことから、家 畜全体の生産量は3.9%増加している。また、家きんの生産額も、4.4%増の100億 ペソ(約260億円)に達し、ブロイラー単独では5.6%増の76億ペソ(約198億円) となっている。 一方、フィリピンの農業の主体である穀物の生産額は、一部の作付けが遅れたこ とから、特に、米の生産量が前年同期比1.6%減の28億トンとなったものの、米な どの生産額の減少分を、トウモロコシやコーヒーなど他の主要作物の増加分が相殺 したことから、同1.6%増の335億ペソ(約871億円)と、全体としては増加基調を 維持した。 今回の発表を受け、農業省は、第1四半期を経て、同国で最も競争力を回復した 畜産業種は養豚であると分析している。年初、豚の農家販売価格は生体1kg当たり 65ペソ(約169円)であったが、4月下旬には74〜77ペソ(約192〜200円)に上昇 しており、フィリピン養豚業者協会は、今年の豚の生産頭数を前年比9.3%増の1, 200万頭と試算している。 特に、豚や家きんの生産が増加した理由として、近年、欧州で拡大した牛海綿状 脳症(BSE)問題の影響から、牛肉離れが進んでいることが指摘されている。フ ィリピンは、歴史的に米国文化の影響を大きく受けており、1人当たりの牛肉消費 量も他のアセアン諸国に比べて多い(99年:3.7kg)ものの、肉牛の生産基盤がぜ い弱であるため、肥育素牛の多くを、豪州をはじめとする海外に依存している。し かし、フィリピン・フィードロット協会によると、BSEの影響による消費者の牛 肉離れおよびペソ安の進行によって、今年の生体牛の輸入頭数は、前年比24%減の 150万頭に落ち込むものと予測され、第1四半期には既にその兆候が現れていると している。 同国では、長引く不況や政局の混迷の中で、農業はいまだに国民の過半を占める 貧困層にとって重要な産業である。農業省は、今年の農業生産額の成長率を4%と 試算しており、GDPのかなりの部分を占める農業の重要性を強調するとともに、 農業の一層の拡大に期待を寄せている。
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