ALIC/WEEKLY


EUの豚飼養頭数、3年ぶりに増加


【ブラッセル 山田 理 4月18日発】欧州統計局(EUROSTAT)は先般、
各加盟国から報告を受けたデータに基づき、豚の飼養頭数(速報値)および豚肉生
産予測を公表した。今回公表された資料は、2001年12月時点の豚の飼養頭数と2002
年第4四半期までの豚肉生産予測である。

 これによると、2001年12月時点のEU15カ国の豚飼養頭数は、前年同期に比べて
1.0%上回る1億2,315万3千頭となった。豚の飼養頭数は、98年から99年にかけて
の記録的な豚価格暴落の影響で、99年以降前年を下回って推移していたが、3年ぶ
りに増加に転じた。

 EUの豚飼養頭数  (単位:千頭、%)
   2001年 2000年 01/00
ベルギー 6,775 7,266 ▲ 6.8
デンマーク 12,975 12,642 2.6
ドイツ 25,814 25,774 0.2
ギリシャ 938 936 0.2
スペイン 24,745 22,149 11.7
フランス 15,253 15,168 0.6
アイルランド 1,763 1,731 1.8
イタリア 8,410 8,329 1.0
ルクセンブルク 76 83 ▲ 7.7
オランダ 11,514 12,822 ▲10.2
オーストリア 3,440 3,348 2.8
ポルトガル 2,389 2,338 2.2
フィンランド 1,454 1,456 ▲ 0.1
スウェーデン 1,920 1,896 1.3
イギリス 5,687 5,948 ▲ 4.4
EU15カ国 123,153 121,886 1.0
 国別に見ると、ドイツをはじめ10カ国で前年を上回った。飼料や労賃などのコス
トが比較的安く、豚肉消費量も増加しているスペインでは、前年同期比11.7%増と
突出した増加を示した。この傾向が続けば、スペインがドイツを抜きEU最大の豚
飼養国となるのも時間の問題との見方もある。また、デンマークでは、やや増加の
伸びが鈍ったものの、好調なイギリス・日本等向け輸出を受けて、同2.6%増と依
然順調に頭数を拡大させている。

 対照的に、イギリスでは、豚コレラや口蹄疫(FMD)など相次ぐ家畜伝染病発
生の影響で、前年同期に比べて4.4%下回った。また、オランダでも、同10.2%減
と大幅に減少している。これは、深刻な畜産環境問題に対処するため、政府主導に
より養豚農家の離農が促進されていることに加え、FMDの発生による殺処分が飼
養頭数の減少に拍車をかけたことが主な要因とみられる。

 こうした飼養動向を受けて、2002年のEU15カ国のと畜頭数は、第1四半期に前
年同期比3.8%増となるものの、その後は徐々に伸び率は鈍化し、2002年通年では
前年比2.4%増の2億505万8千頭になると予測されている。

2002年のEUのと畜頭数(単位:千頭、%)
   と畜頭数 前年同期比
第1四半期 51.934 3.8
第2四半期 49.509 2.7
第3四半期 49,911 2.2
第4四半期 53,704 1.0
2002年通年 205,058 2.4
 EUの豚肉価格(枝肉卸売価格)は、牛海綿状脳症(BSE)問題再燃後の牛肉
の代替需要が増加したことなどにより、高水準で推移していた。しかし、消費者に
高値が敬遠されたこと、牛肉消費の回復に伴い豚肉消費も通常ベースに戻ったこと
などから、豚肉価格は2001年9月以降、下落傾向に転じている。

 デンマークの業界団体の予測によれば、EU加盟国の多くが環境問題に直面して
いることから、EUROSTATの推計と同様に、EU全体では豚肉生産の大幅な拡大は考
えにくいとして、2002年のEUの豚肉価格は、高い水準にあった前年より低下する
ものの、養豚経営に良好な水準を維持するものとみられている。


元のページに戻る