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【シンガポール 小林 誠 4月18日発】シンガポール資本と中国のシャンドン・ リウ社との合弁により、数年前に設立されたN&N農業社は、シンガポール国内に 総工費2,500万シンガポールドル(約18億円:1シンガポールドル=72円)を投じ て採卵鶏100万羽規模の養鶏場を建設中である。同養鶏場は、2003年に完成予定で あり、完成のあかつきには東南アジア最大規模の養鶏場となる。 シンガポールは、国土が狭あいであることから、畜産業の立地を制限しており、 鶏卵の自給率が約35%である以外、ごく少量の牛乳と山羊乳が生産されているにす ぎない。鶏卵も需要量の半分以上は、隣国であるマレーシアやインドネシアからの 輸入に頼っている。 今回のN&N農業社の計画は、各8万余羽収容可能な採卵鶏舎を12棟、育すう舎 を4棟、選別作業棟を1棟建設し、さらに1時間当たり10トンの処理が可能な飼料 工場を併設するという大規模なものである。同社は、現在、飼料をマレーシアのゴ ールド・コイン社から購入しているが、飼料工場が完成すれば外部から購入の必要 がなくなる。採卵鶏舎と育すう舎は、土地面積の縮小と作業の省力化のため、高密 度での飼養が可能な閉鎖鶏舎を採用することとしており、すでに、一部は稼動して いる。 各採卵鶏舎は、93×13×5.5メートルの設計となっており、ビッグ・ダッチマン社 の8段式ケージが設置される。また、各鶏舎には1.5馬力48インチの冷房兼換気用 扇風機20基が設置される。育すう舎も採卵鶏舎と同様の設計になっており、内部に は同社のスターター・バタリー・ケージが設置される。 シンガポールの養鶏場は、通常、開放鶏舎だが、日中の最高気温の平均が33℃と いう熱帯の高温多湿気候のため、へい死率が高く、飼料効率が劣り、産卵率の向上 も困難だった。閉鎖鶏舎にすることで、舎内は常時22〜23℃に保つことができるた め、N&N農業社では、生産効率が向上することを期待している。また、都市近郊 の養鶏で特に問題となるハエなどの衛生害虫の発生についても、扇風機による常時 対流効果により、鶏糞から発生するアンモニアの舎内濃度を低くすることができ、 防除効果があるとしている。 シンガポール政府は、国内における鶏卵の生産量目標を日量160万個、自給率で は2000年現在の35%を53%まで引き上げることを目標としている。現在の生産量は 明らかにされていないため、上記の数字から逆算すると、現在の生産量は1日当た り約106万個、国内の需要量は同約302万個に相当する。N&N農業社ですでに稼動 中の鶏舎での成績は、30万羽の採卵鶏が1日当たり25万個の生産があるので、産卵 率83%程度に相当する。これを全体の完成時に当てはめると、100万羽の採卵鶏が 1日当たり83万個の鶏卵を生産することになり、他の業者が減羽などをしなければ、 供給量が日量約190万個まで上昇する。 シンガポールの鶏卵価格は、日本からの空輸によるものが1個1シンガポールド ル(72円)、国内で生食用に生産したものが同75セント(54円)と日本人をターゲ ットにしたものはきわめて高い価格で販売されているが、通常のものは同12〜30セ ント(8.6〜21.6円)、マレーシアではさらに安値であり、大幅な供給増加により、 今後、大幅に値崩れを起こす懸念がある。
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