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アルゼンチン牛肉振興機関、具体化の動き


【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 2月14日発】アルゼンチン政府は97年以
降、国産牛肉の輸出振興および牛肉の国内需要促進などを目的とした新しい機関の
設置法案の審議を重ねてきたが、昨年末ようやくアルゼンチン牛肉振興機関(協会)
設置法が国会を通過し、2001年12月11日に公布された。17日の官報掲載から数日後
にデ・ラ・ルア政権が崩壊、その後の政治経済の混乱で同設置法は事実上動けなか
ったが、2002年2月1日にEU向け生鮮牛肉の輸出が解禁されたことを契機に、農
牧水産食糧庁は新機関の具体化に向けて動き出したようだ。

 新機関設置の背景には、97年の口蹄疫ワクチン接種清浄国の認定とそれに続く米
国の生鮮、冷蔵および冷凍牛肉の輸入解禁(米国枠設定)、当時のアルゼンチン国
内の牛肉生産量と消費量の低下傾向などが挙げられる。

 同設置法では、国家機関ではない公的機関としてアルゼンチン牛肉振興協会を設
置し、生産者や食肉処理加工業の競争力を向上させ、国産牛肉の輸出と国内の牛肉
需要促進のための助成を行うとし、同協会が直接もしくは間接的に牛肉取引を行う
ことは禁止されている。

 また、後述する同協会理事会の管理下に牛肉振興基金が置かれ、以下の目的に基
金が充てられる。@協会の目的達成に必要な手続きや協定締結の促進と実施、Aバ
ランスの取れた食生活に牛肉消費をどう位置付けるかといった視点での調査研究、
B畜産業界の利害調整を行い宣伝活動や国内外の牛肉製品などの見本市への参画、
C各種会議やセミナーの開催、D人材育成のための研修制度創設、E国内外の関係
機関との人的・技術的交流の促進と実施、などである。

 牛肉振興基金の財源は、肉牛生産者から、取引頭数に対し国が公表する生体牛指
標価格の0.20%を、また、と畜を行う食肉処理加工業者から、同0.09%をそれぞれ
上限として徴収した金額を充当し、年間約1,200万ペソ(約8,200万円:1ペソ=68
円)が見込まれている。徴収細則は別途定められるようである。

 協会の運営管理は理事会が行い、8名の理事は、生産者代表として農業4団体か
ら4名、産業界代表として食肉処理加工業者からなる主要5団体から3名、農牧水
産食糧庁の代表1名が選ばれる。理事会は年度予算、活動計画の作成と牛肉振興基
金の管理を行う。

 アルゼンチン経済が完全変動相場制に移行した初日の2月11日の為替相場は1ド
ルが1.8〜2.2ペソで売買され、当初懸念されたペソ暴落は起こらなかった。しかし
今後の為替相場や物価の動きは不安含みである。去勢牛価格は、昨年末から最安値
を記録したが、今年に入り持ち直し、今のところ堅調に推移している。

 不安定で厳しい政治経済情勢の中で新機関設立の土台は準備されたが、新しい機
関が具体的な姿となる時期が注目される。


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