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【ブラッセル駐在員 山田 理 2月14日発】EUの常設獣医委員会(SVC)は 2月14日、めん羊・ヤギに対する伝達性海綿状脳症(TSE)の検査頭数を拡大す るとしたTSE規則修正に関するEU委員会提案を採択した。 18ヵ月齢超の食用に供する健康なめん羊・ヤギおよび農場で死亡しためん羊・ヤ ギに対する抽出検査は、2002年1月から既に実施されているが、この検査対象頭数 が4月から大幅に増加されることになる。 イギリスやスペインなどのめん羊のと畜頭数が多い国では、年間のTSE検査頭 数が1万8千頭から6万6千頭に引き上げられる。このうち、6万頭が食用に供す る健康なめん羊・ヤギに対する抽出検査、残り6千頭が農場で死亡しためん羊・ヤ ギに対する抽出検査として割り当てられた。この結果、2002年のEU全体のめん羊 ・ヤギに対するTSE検査頭数は、当初予定の16万4千頭から3倍以上の56万頭に 拡大される。 今回の検査頭数の拡大は、昨年10月に公表された科学運営委員会(SSC)の勧 告に基づくものである。現在、スクレーピー(人に感染しない)は、めん羊・ヤギ の唯一のTSEとして知られている。しかし、近年、TSEの1つである牛海綿状 脳症(BSE)がめん羊・ヤギにも入り込んだとの懸念が持たれている。現在のと ころ、自然条件下で、これらの小型反すう動物にBSEが存在するとの証拠は得ら れていない。しかし、過去にBSE感染因子を含んでいた可能性のある肉骨粉(M BM)がめん羊に供与されたことを否定できないため、めん羊にもBSEが存在す る危険性を排除することはできないと指摘されていた。 2002年における各国のめん羊・ヤギに対する新たなTSE最低検査頭数は、以下 のとおりである。 (単位:千頭)
区分 |
最低検査頭数 | 飼養頭数 (参考) |
|
国名 | 食用 | 死亡畜 | |
ベルギー | 3.75 | 0.45 | 165 |
デンマーク | 3 | 0.4 | 116 |
ドイツ | 60 | 6 | 2,280 |
ギリシャ | 60 | 6 | 13,865 |
スペイン | 60 | 6 | 26,732 |
フランス | 60 | 6 | 10,389 |
アイルランド | 60 | 6 | 5,143 |
イタリア | 60 | 6 | 12,464 |
ルクセンブルグ | 0.25 | 0.03 | 8 |
オランダ | 39 | 5 | 1,570 |
オーストリア | 8.2 | 1.1 | 395 |
ポルトガル | 22.5 | 6 | 4,063 |
フィンランド | 1.9 | 0.25 | 81 |
スウェーデン | 5.25 | 0.8 | 442 |
イギリス | 60 | 6 | 27,667 |
EU計 | 503.85 | 56.03 | 105,380 |
資料:EU委員会、EUROSTAT EU委員会は、2002年におけるめん羊・ヤギに対するTSE検査の実施に当たっ て、総額290万ユーロ(約3億4千万円:1ユーロ=118円)を拠出することとして いたが、検査キットの購入数増加に対処するため、400万ユーロ(約4億7千万円) 以上を増額する提案を近日中に行う予定である。 なお、これまでBSEが見つかっていなかったフィンランドやオーストリアでも、 昨年12月に相次いでBSEの初発例が確認された。これにより両国では、食用に供 される30ヵ月齢超の健康な牛に対する全頭検査などBSEの発生がないことを理由 に免除されていたBSE対策についても、他のBSE発生加盟国と同様に求められ ることとなる。
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