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【シンガポール駐在員 小林 誠 2月14日発】タイ政府は2002年の学校給食用牛 乳(学乳)予算の詳細を公表した。これによると、供給対象学年は前年と変わらな いものの、供給日数を前年の200日から休校日を含めた260日に拡大することにして おり、政府の負担額が約11%増加するとともに、各県にも新たな負担を求めている。 今回の予算が公表どおり実施されれば、これまで大きな問題となってきた休校日の 余乳処理問題がいくぶんかは軽減される見込みである。 タイの学乳制度は92年に幼稚園児のみを対象にして開始され、供給日数120日、 予算額も2億7,900万バーツ(約8億1,500万円:1バーツ=2.92円)と小規模だっ たが、94年には供給日数を200日に拡大し、順次対象年齢も拡大してきた。2001年 からは対象をインターナショナル・スクールなど一部の私立校を除く幼稚園から小 学校4年生まで(4歳から10歳まで)の全児童と小学校5、6年で標準体重を下回 る児童の合計約622万人を対象に予算額60.7億バーツ(約177億円)とした。2002年 は、対象学年が変更されない中で、児童数は約584万人と前年を下回っているもの の、予算額は約67.5億バーツ(約197億円)と、前年を約11%上回っている。学乳 予算は、管轄児童数に応じて教育省(57.7億バーツ:約168億円)、内務省(6.8億 バーツ:約20億円)、バンコク都(3億バーツ:約9億円)、パタヤ市(900万バ ーツ:約2,600万円)に配分されている。同国の学乳制度は、対象児童に1日当た り5バーツ(約15円)で200mlのUHT牛乳か殺菌乳を提供するもので、UHTと殺菌乳 の比率は7対3となっている。また、この制度でカバーしている児童数は、同年齢 の児童数全体の7割程度となっている。 今回、対象児童数が減少しながらも予算額が増加したのは、供給日数をこれまで の200日から休校日の30日を含む230日に拡大したためである。政府は、残りの30日 について、各県の予算で供給し、合計供給日数を260日にすべく調整中である。タ イの学校は、1学期が130日の2学期制であり、各学期に30日ずつの休校日が含ま れている。今回の措置は、各学期の休業日にも児童の栄養水準を向上させようとい うのが表向きの狙いだが、かねてから大きな問題となっている余乳の発生を抑えよ うとする意図もある。 農業協同組合省は、学乳制度に直接携わっていないが、99年、内閣の指示により、 学乳には100%国産生乳を使用しなければならない旨の通達を行った。これに対し ては、国産生乳を使用することによって利幅が減少する学乳供給業者の強い反発が あり、実施は昨年までずれこんだ。また、同省は問題なしとしているものの、この ような通達は内外無差別を規定したWTO協定に抵触している可能性があり、同様 の制度により国内酪農を振興したいフィリピン政府は国産生乳使用の義務付けを躊 躇している。国産生乳100%使用義務を課することにより、タイでは1日当たり1,3 00トンの生乳生産量のうち、1,200トンが学乳で消費され、酪農振興に大きな役割 を果たしていることも事実であるが、同時に休校日には大量の余乳が発生するとい う皮肉な結果も生じている。
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