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【シドニー駐在員 幸田 太 1月24日発】豪州食肉家畜生産者事業団(MLA) は1月18日、2001年1〜12月牛肉輸出量が過去最高を記録したと公表した。2001 年は後半の季節的な減少に加え、主要な輸出国である日本で発生した牛海綿状脳 症(BSE)による牛肉消費の減退および米国の関税割当枠の超過の懸念などに より輸出量が急減したが、前半の好調な伸びに支えられ結果的には前年比4.9% 増の94万6,604トンとなった。 その内訳は、米国向けが前年比約13%増の39万7,700トン、日本向けが同約2 %減の31万9,100トン、韓国向けが同約23%増の5万6,800トン、カナダ向けが同 約23%増の5万900トンとなっている。 月別の日本向け輸出量は昨年10月が前年同月比2.1%減の2万8,045トン、11月 が同26.5%減の2万800トン、12月が同48.2%減の1万3,090トンと減少が止まら ない状況で、12月は前年同月比48%減まで落ち込んでいる。 BSEの発生による牛肉消費の落ち込みから、日本向け輸出量は減少したが、 その減少分を補うかたちで韓国向けが10月から好調に数量を伸ばし、特に12月は 前年同月比48%増の8,243トンとなった。 もともと豪州では12月のクリスマスから翌年1月の第3週までの約1カ月間は、 クインズランド州を中心に大手の食肉処理業者が生産を休業する期間であるが、 今シーズンは、日本をメインマーケットにしていた主要業者が、休暇の前倒しや 延長を余儀なくされている。 業界1位のオーストラリア・ミート・ホールディング社では、4工場のうち主 力2工場は稼動を開始したものの残り2工場は休業を延長中である。また、2位 のニッポン・ミート・パッカーズでは3工場のうち1工場の休暇を今月末まで延 長する予定であり、3位のコンソリデート・ミート・グループ(CMG)に至っ ては、3工場のうち1工場を無期限閉鎖、または他に売却すると報道されている。 さらに、日本向けでは老舗のキルコイ・パストラル社(キルコイ)も昨年12月に 無期限の工場閉鎖に入ったまま、今も生産再開のめどがたっていない。CMGと キルコイはともに労働組合とのトラブルに発展し始めているなど、自ら輸出を行 う大手パッカーの状況は極めて深刻でその状況が徐々に拡大し、いまだ事態の収 束を見せる様子はない。 また、生産段階でも、昨年9月にピークを示した生体牛価格は、今年に入り大 手パッカーの休業延長など不安要素が市況に影響し、前年同期より約15%高い価 格を維持しつつも、年末と比べると10%下落しており、下降基調を示し始めてい る。豪州の肉牛生産者にとって生体牛価格の高騰によりここ数年は経営的に非常 に良い期間であったが、そこにも徐々に陰りの気配が感じられる。 昨年の牛肉輸出量は、過去最高を記録し、MLAが目標としている100万トン の牛肉輸出量に手が届く寸前となったが、2002年の展開は誰も分からない状況と なるとの見方が広がっている。 豪州の牛肉産業は、全体生産量の約6割を輸出する輸出型産業である。また、 その輸出量のなかで日本向けと米国向けで約7割を超えているため、ひとたび輸 出相手国の状況が昨年のように急変すれば、産業全体がその影響を大きく受けて しまうリスクを含んでいる。
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