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メコンデルタで酪農振興が始動(ベトナム)


【シンガポール 小林 誠 6月27日発】ベトナム農業・農村開発省は、6月14〜
17日までの4日間にわたり、メコンデルタ地帯の中心都市であるカントー市で農畜
産物交易会を開催し、7万人を超える農家を集めた。14日には、同会の一環として
酪農セミナーを開催し、メコンデルタ各県農業・農村開発部の普及担当者、酪農家
や今後酪農を希望している一般農家100人以上が集まり、会場に入りきれない盛況
となった。同国では、毎年、数百万トンの米の輸出余力を有しているが、米の国際
相場が低調であることから、農家の収入向上策として酪農振興が重要課題とされて
おり、ホーチミン市の酪農が成功裏に推移していることから、特に南部各県での意
欲が高まっている。

 メコンデルタ各県では、近年の農作業の機械化の進展に伴い、過去20年間に牛の
頭数が大幅に減少している。今回、酪農開発を集中的に行うこととされたのは、酪
農に必要な淡水の地下水が得られるドンタップ、アンザン、カントー、ロンアンの
4県だが、これらの県における牛の頭数の減少率は各々▲15.5%、▲44.2%、▲47.0
%、▲55.6%となっている。また、各県の乳用牛頭数は、ドンタップ県とアンザン
県がゼロ、カントー県が24頭、ロンアン県が877頭であり、4県合計でも901頭であ
り、4県の牛の総頭数の1.4%を占めているにすぎない。

 今回のセミナーで農業・農村開発省が公表した計画によれば、4県では、2002年
中に乳牛頭数を2000年の6倍に相当する5,430頭まで増やし、2005年には17,800頭に
まで増やすこととしている。これら4県には現在のところ乳用牛がほとんどいない
ため、増頭は豪州を中心とした外国からの輸入と国内の乳牛の9割に相当する36,000
頭あまりが集中しているホーチミン市とドンナイ県など同市に隣接する4県からの
移入に頼らざるを得ない状況である。現在、同国では、生乳の農家手取り価格が1
kg当たり4千ドン(約32円:100ドン=0.8円)以上と他の農畜産物に比べて収益性
の高い水準に設定されており、ホーチミン市などの酪農家は高い収益をあげている。
このため、南部各県では酪農生産拡大意欲が高まっており、国内の乳牛価格が高騰
している。なお、最近豪州から輸入されたホルスタイン種の初妊牛の場合、1頭当
たり1,250米ドル(約15万円:1ドル=120円)、高能力として農民に好まれる米国
からの輸入では豪州産の2倍の経費が必要となっており、初期投資の確保が課題と
なっている。

 ベトナム最大の都市であるホーチミン市の南方に広がるメコンデルタ地帯には12
県があり、国内の米生産量の50%以上、1,600万トンを超える生産量を誇る穀倉地
帯となっている。同地域は、かんがい用の水路が網の目のように発達し、ほとんど
の地域で米の三期作が行われており、水田以外の耕地でも年間3ヵ月程度は冠水状
態におかれる。このような環境に適した牧草類はパラグラスやハイマネチ属など数
種類に限定され、パニカム類の栽培で1ヘクタール当たり400トンの青草を生産でき
るホーチミン市周辺より不利な状況にある。現在のところ、乳牛頭数が少ないこと
もあって、ベビーコーンの収穫残さや豆腐粕などが無料で入手できるため飼料の確
保には問題がないが、今後、計画どおりに乳牛頭数が増加するのであれば、土地の
制約から飼料の確保が問題とされるものとみられる。

 なお、生乳の処理に関しては、カントー市にビナミルク社の1日当たり100トンの
処理が可能な工場が稼動済みであり、当面問題はないとされている。


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