ALIC/WEEKLY


EU、Tボーンステーキの解禁に向け検討開始か


【ブラッセル 山田 理 5月23日発】EUの科学運営委員会(SSC)は5月16
日、背根神経節を含むせき柱について、人への牛海綿状脳症(BSE)感染リスク
の評価に関する見解(opinion)を採択した。

 現在、EUでは、12ヵ月齢超の牛の背根神経節を含むせき柱は、BSE感染の可
能性の高い特定危険部位(SRM)の1つとして、除去・廃棄することが義務付け
られている(哺乳動物由来たんぱくの反すう動物への給与禁止を早くから実施した
イギリスなどでは、SRMから除外されている)。したがって、多くの加盟国では、
ロースとヒレ肉をせき柱ごとカットしたTボーンステーキは、一部の輸入牛肉を除
き販売されていない。

 こうした状況の中、SSCは、現在までのBSE検査の結果などを勘案して、@
背根神経節のBSE感染可能性は低いとしたアイルランド食品安全機関の最近の定
量分析に対する評価、A背根神経節を含むせき柱のBSE感染リスクの評価、B12
ヵ月齢超の牛のせき柱をSRMとして扱うとした現在の月齢基準の緩和を妥当とす
る根拠が見つかっているか、といった3つの項目について諮問されていた。

 今回公表された見解では、@およびAに関して、アイルランド食品安全機関が実
施したリスク評価は科学的に妥当であると認めたものの、その分析結果については、
あくまでもアイルランドのみに当てはまるもので、牛肉の消費パターンやBSE発
生率の違いから、他の加盟国に一般化して適用できないとしている。

 他の加盟国についての同様の評価には関係情報の収集が必要であるが、その一部
についてはすぐに入手することはできないとみている。

 また、このようなリスク評価に不可欠な要素として、潜伏期間中にいつからせき
髄および背根神経節が感染性を持つかといった問題がある。検出可能なせき髄の感
染性は潜伏期間の最後の数ヵ月のみに認められると考えられている。しかし、限ら
れた頭数を用いた研究結果からは、臨床的な兆候が現れる数ヵ月前まで脊髄の感染
性はないと結論付けることはできないとし、合理的な最悪のケースの仮説として、
潜伏期間の後半から高い感染リスクを有すると考えられるとしている。

 Bに関しては、肉骨粉(MBM)の飼料利用が全面的に禁止された2001年1月以
前に生まれた牛については、12ヵ月齢超の牛のせき柱をSRMとして扱うとした現
在の月齢基準の引き上げを導き出せる調査結果またはBSE検査の結果はないとの
見解を明らかにした。

 MBMの飼料利用禁止措置以降に生まれた牛については、禁止措置が適正に実施
されていれば感染リスクは低いとした2001年1月の見解を再確認した。

 SSCは、各加盟国に対し、MBMの飼料利用全面禁止を含めたBSEリスク管
理対策が実施された前および後の期間における、人への暴露リスクに関する評価を
実施することを提言した。また、このような各国の評価を踏まえ、BSE感染リス
クに関する見解を再検討・更新したいとしている。

 EU委員会では、今回のSSCの見解により、MBMの飼料利用禁止措置以降に
生まれた牛については、12ヵ月齢超のせき柱をSRMとする基準の緩和を各加盟国
と協議する可能性が開けるものとみている。


元のページに戻る