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【シドニー 幸田 太 5月23日発】トラス農相は5月15日、かねてから豪州牛肉 業界で懸案となっていた米国向けの牛肉輸出枠の配分方法を発表した。これによる と、輸出業者ごとに、米国向け輸出実績を基に全体枠の6割を配分し、残りの4割 をその他向け輸出実績を基に配分することを基本とし、さらに一部の業者について は調整するしくみとなっている。 その輸出枠配分に用いる過去の輸出実績は、2000年11月1日から2001年10月31日 とし、配分の適用は、2002年1月1日に遡り配分するものである。また、2003年度 中に2004年度以降についての配分方法を再検討するという決定となった。 食肉諮問協議会(RMAC)は、今年3月に一度勧告したが、業界の合意不足を 理由にトラス農相が再検討のため棄却したため(平成14年3月26日海外駐在員情報 参照)、4月に14項目からなる再勧告をしており、今回の決定はこれを受けたもの となっている。 トラス農相による追加項目のポイントは RMACの前回勧告時に牛肉業界内部 で調整できなかった対米輸出主体の輸出業者の取り扱いであり、それらに対して、 対米向け牛肉輸出量が前年輸出実績で9割以上の輸出業者に対し優先的に9割を配 分すること、不公平感を是正するため、6割:4割配分を行った後、前年度実績に 対し下限として85%以下および上限として140%以上の激変緩和的な制限措置を設 けたことの2点である。 最終的な概要は次のとおり。 ・ 今回の輸出割当て方法は2002年および2003年に適用する。2004年については20 03年度中に、配分方法を見直す。 その場合は、政府がRMACに意見を聞く。 ・ 枠の配分は、2000年11月1日から2001年10月31日間の輸出業者ごとの輸出船積 み記録を基礎に算出し、2001年1月1日から適用する。枠は取引可能とする。 ・ 枠の配分は米国向け6割、米国以外4割を基本に、輸出業者ごとに対前年比で 85%の下限および140%の上限を設けて行う。 ・ 政府保留分として、2002年および2003年は約1万5千トンを不測の事態に備え 政府が管理する。その配分申請は、枠の告示後30日以内に受け付ける。 ・ 枠の管理経費は枠の使用者が負担する。 ・ 連邦政府は引き続き米国政府に対し枠を広げることまたは撤廃することを要求 する。 今回のトラス農相の発表に対して、上院では、野党の労働党と民主党が結果とし て一部の米国向け輸出業者に配分が手厚くされたことに対し6月に聴聞会を開くこ とを決定し、反意を表している。また、豪州肉牛生産者協議会(CCA)も3年に 満たない期間での配分方法を見直すトラス農相案について、牛肉業界に混乱を来す とし嫌悪を顕にしている。 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、本年4月末時点での米国向け船 積数量は、121,974トンとなっており、米国の輸入割当数量378,214トンに対し32% を消化しており、米国の良好な輸入価格と生産の減少による品薄感や日本の需要の 低迷により、米国への牛肉輸出数量は増加し、今年度は昨年よりも早い時期に輸入 割当数量を超過するとの見方もあり、割当枠配分の早期実施が待たれている。
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