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【ワシントン 渡辺 裕一郎 9月26日発】 米国・カナダの西部山岳地帯から大平原 にかけての一帯や、米国の東海岸中部において、近年で最も深刻な干ばつの被害 が広がっている。米農務省(USDA)が発表した9月22日時点の調査結果によ れば、5段階評価で見た全米の採草放牧地の状況は、「かなり悪い」(24%)と 「悪い」(25%)を合わせた割合が、前週よりも3ポイント減の49%と、若干は 改善したものの、まだ半分近くにも及んでおり(昨年同時期は33%)、この割合 が50%以上となっている州は、カリフォルニア州の90%を筆頭に26州に上ってい る。また、サウスダコタ州の一部においては、約半数の畜産農家において粗飼料 が不足し、8割弱の農家が牛群の縮小を予定しているという調査結果も報じられ ている。 こうした状況下、USDAは9月19日、作物保険などの既存の災害対策ではカバ ーされない畜産農家における干ばつの被害額が、この2年間で約7億5千万ドル (約900億円:1ドル=120円)に上るとして、この額に見合った予算規模で助成 金を交付する「畜産補償プログラム」の実施を決定した。被害額の内訳は、2001 年が約1億5千万ドル(約180億円)、2002年が約6億ドル(約720億円)と見積 もられている。これは、@暑熱による家畜の死亡や生産のロスなどによる収入減 (2001年:約1億ドル、2002年:約6億ドル)とA飼養管理方法の変更などに伴う 電気、水道代などの追加的費用(同約5千万ドル、約4億ドル)の合計から、B すでに講じられている繁殖農家への飼料支援プログラムなどの予算額(2002年の み:約4億ドル)を除いて算出されたものである。 今回の畜産補償プログラムの対象となるのは,2001〜2002年の干ばつ被害地域 として指定された、アリゾナ、モンタナ、ネブラスカ、ニューメキシコ、ノース ダコタ、サウスカロライナおよびユタの7州全域のほか、カリフォルニアやコロ ラドをはじめとする30州の中の特定地域における畜産農家である。助成金は、20 02年7月1日時点で当該農家において飼養されていた家畜に対し、1頭当たりの 定額(肉用雌牛・バイソン:18ドル、乳用雌牛:31.5ドル、育成牛:13.5ドル、 羊・山羊:4.5ドル)が支払われる。 こうした畜産農家への干ばつなどの災害対策としての助成金の支払いは、98〜 2000年の間も毎年別途の立法措置によって実施されてきたが、今回の対策におけ る2002年分の予算規模の方が突出して多く、その被害の甚大さを物語っている。 ただし、今回の対策の財源は、以前の対策のように純粋な追加予算として認めら れたものではなく、農業関係の使途のため特別に認められている留保財源からま かなわれることとされている。この留保財源の活用は、干ばつの被害で「支援を 最も必要としている畜産農家」(ベネマン農務長官)に対する追加的な対策の必 要性については認識しつつも、財政圧迫の懸念から「緊急災害対策は、すでに認 められた農業予算の範囲内で実施されるべき」との立場を一貫して表明してきた ブッシュ政権にとっての苦肉の策であると言える。 しかし、9月24日には、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)や全国生乳生産 者連盟(NMPF)などの畜産団体を含む34の農業関係団体が連名で、耕種作物 や干ばつ以外の災害による被害を受けた生産者への対策が不十分であるとして、 上院議会をすでに通過済みの59億ドル(約7千億円)の緊急災害対策を盛り込ん だ法案の可決を求めた書簡を上下両院に送付した。こうした要請を背にした議会 と、すでに対策は出そろったとするブッシュ政権との間の対立は、今も続いたま まである。
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