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GM大豆の販売に関する暫定令が発令 ブラジル政府は3月27日、2003年に収穫される遺伝子組み換え(GM)大豆の販 売に関する暫定令(3月26日付け第113号)を官報に掲載した。 ブラジルでは、連邦裁判所が2001年3月、GM大豆の生産・販売を禁止する仮処 分を下している(本紙通巻第525号を参照)。しかしながら、3月6日付けの政府 系機関紙アゼンシア・ブラジルによると、現政権は、ブラジル国内で数百万トンの GM大豆が栽培されていることを認めており、これらの大豆を栽培した多数の小農 に損害を与えることのないよう、収穫物の販売を可能とする措置を検討していたと している。なお、暫定令とは、その重要性または緊急性が認められる場合、大統領 が法律の効力を有するものとして発令できるものである。 今回の暫定令の主な内容は次の通りである。 @ 2002/03年度に収穫されるGM大豆の国内外における販売は、2004年1月31日 を期限として認められる(2002/03年度の収穫は、2003年2月下旬頃から始まり 同年5月末までにほぼ終了)。しかし、この日以降に発生するGM大豆の在庫は 焼却処分される。 A @で対象となるGM大豆(同大豆製品を含む)には、適切なラベル表示により、 遺伝子組み換え体(GMO)が混入していることを消費者に伝えなければならな い。 B 2002/2003年度に収穫される大豆の生産者および取引業者は、ブラジル農務省 が信任する認証機関が発行する非遺伝子組み換え体(非GMO)の証明書を、取 引の際に提示しなければならない。 C @で対象となるGM大豆の種子としての利用・販売や、2003/04年度以降のG M大豆の作付けは、全面的に禁止される(2003/04年度の大豆作付けは、2003年 10月頃から開始)。 D 本来国内市場向けに出荷が予定されていたか、または、暫定令発令日までに国 内での売買契約が行われたGM大豆の一部を輸出に向ける奨励策を政府は講じる ことができる。 E 本暫定令の規定に違反した者は、1万6,110レアル(約58万円:1レアル=約36 円)以上の罰金が課せられるほか、金融機関からの公的融資などを受けることが できない。 暫定令に対する関係者の反応はさまざま 今回の暫定令に対する関係者の反応はさまざまである。GM大豆問題に慎重な態 度をとってきたシルバ環境相は「GM大豆の作付けを監視する組織を作り、違反者 への罰則を通じて、生産者に対し法律の順守を自覚させたい」と述べている。また、 モンサント社は今回の措置を歓迎する一方、GM大豆の生産・販売に反対し続けて きた消費者保護団体や環境保護団体は、この暫定令は、経済面のみを重視した、人 体への影響を考慮しないものであり、司法当局がGM大豆の生産・販売を禁止する 判決を下しているにもかかわらず発表されたとして、再び裁判に訴える構えである。 また、全国農業連盟は、ブラジルでは、生産されるすべての大豆(大豆製品を含 む)についてGMOか非GMOかを証明する体制が整備されていないことなどから、 これらの販売に混乱を来たすとしている。また、業界や農協は、GM大豆の表示義 務について、作物の栽培に従事しないものが同表示に係るコストを負担するのは不 合理であるとし、中でも、鶏肉業界では、ブラジル産鶏肉の主要輸出市場であるE Uからの需要が低下する懸念が広がっている。 今回の暫定令をめぐっては、GMOと非GMOの証明方法、その費用負担、ラベ ル表示などについてさらに検討が行われるものとみられ、今後の議論の行方が注目 される。
【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 4月2日発】
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