ALIC/WEEKLY
EU域内向けは3.5%増加
デンマーク豚肉機構連合(DS)によると、2002年の同国の豚肉輸出量(生 体、加工品等を含む)は、前年を3.4%上回る163万1千トンとなった。デンマ ークはドイツ、スペイン、フランスに次ぐEU第4位の豚肉生産国であるが、 国内生産量の約8割以上を輸出する世界有数の豚肉輸出国でもある。 デンマークの輸出先別豚肉輸出量 (単位:千トン、%)
|
2002年 |
2001年 |
増減 |
EU域内 | 1,030 | 995 | +3.5 |
ドイツ | 342 | 329 | +3.9 |
イギリス | 312 | 307 | +1.5 |
イタリア | 143 | 139 | +2.7 |
EU域外 | 601 | 583 | +3.1 |
日本 | 243 | 231 | +5.6 |
ロシア | 104 | 107 | ▲2.7 |
米国 | 54 | 52 | +3.2 |
合計 | 1,631 | 1,578 | +3.4 |
2002年の同国の豚肉輸出量を輸出先別に見ると、輸出量の6割を占めるEU 域内向けは、前年に比べて3.5%増の103万トンとなった。主要な輸出国は、ド イツ、イギリス、イタリア向けで、いずれも増加した。これは、豚肉や肥育用 子豚の有力な供給国であるオランダの輸出量が減少したことが要因の1つとみ られる。オランダでは、養豚に起因する環境汚染を防止するため、豚飼養頭数 (養豚農家数)の削減を政策的に誘導していることなどから、輸出余力が次第 に低下している。 EU域外向けは3.1%増加 EU域外向けも前年に比べて3.1%増の60万1千トンとなった。EU域外に おける最大の輸出先である日本では、2002年8月から豚肉等に対する関税の緊 急措置が発動されたことから、輸出の減少が懸念されていたが、2002年の日本 向け輸出量は24万3千トンと前年を5.6%上回る結果となった。 これとは対照的に、第2の輸出先であるロシア向けは、安価なブラジル産豚 肉に市場を奪われた結果、10万4千トンと前年を2.7%下回った。 注目される2003年の輸出動向 2003年のデンマークの豚肉生産量は、前年に比べて約1%減少するとEU統 計局(Eurostat)では予測している。しかし、DSでは前年並みの生産を維持 するとの見方もある。このような見方からすると、国内市場の小さい同国では、 生産動向が輸出に直接影響することから、2003年の輸出量も、2002年並の水準 を維持するものとみられる。 EU域外の主要輸出先国での動向を見ると、日本では豚肉等に対する関税の 緊急措置は3月末で解除されたが、その一方で、ロシアでは4月から、豚肉に 対する関税割当制度が開始された。年間40万5千トン(2003年は適用期間を考慮 し33万7,500トン)の割当枠が設定されたが、これは、2002年における同国の 輸入実績見込み数量の7割程度に相当する数量である。EUの食肉関係団体で は、今回の関税割当制度の導入と安価なブラジル産豚肉との競合により、ロシ ア市場におけるEU産豚肉のシェアは低下する可能性が高いとみており、デン マークの輸出もその影響を完全に回避することはできないものとみられる。部 位や品質・規格等が異なることから、ロシアに輸出できなくなった余剰豚肉が 日本向けに輸出されるとは考えにくいが、間接的に日本市場への輸出圧力が強 まる可能性は否定できない。
【ブラッセル駐在員 山田 理 4月1日発】
元のページに戻る