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豪州、EUの主張に対して検疫制度堅持の姿勢


EUが豪州の検疫制度でWTO協議要請を決定

  欧州連合(EU)は3月31日、豪州の輸入検疫制度が農産物貿易を阻害してい
るとして、紛争処理に向けて世界貿易機関(WTO)協定に基づく2国間協議を
要請することを決定した。

  EUは、まず、豪州は農産物自由貿易を他の国々に要求する一方で、検疫制度
を使って自国の農民を保護していると批判している。その上で、具体的に阻害さ
れた品目として鶏肉、かんきつ類、豚肉などを挙げ、豪州の検疫制度は極めて制
限的であり、WTOの衛生植物検疫協定(SPS)協定にうたわれている「加盟
国は、人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要な衛生検疫措置を
とる権利を有する」というルールを逸脱していると主張している。

  そのため、EUは、WTOの訴訟手続きに基づき、豪州に農産物市場アクセス
において何が重要であるかを理解させることを狙いとしている。


豪州連邦政府は徹底抗戦の姿勢

  EUの決定を受けて豪州連邦政府は4月1日、ベール貿易相、トラス農相がそ
れぞれ声明を発表し、協議に入った場合には徹底抗戦する姿勢を表している。

  ベール貿易相は、今回のEUの主張が、昨年豪州がブラジルと共同でEUの砂
糖助成金政策についてWTOに提訴したことに対する報復的な意図を持ち、また、
WTO農業交渉においてEUの交渉姿勢による結果として(期限までに)モダリ
ティーを確立できなかったことから注意をそらすための企てであるとしている。
その上で、豪州の検疫制度は科学的根拠に基づき、透明性を確保した国際的な水
準のものであり、EUはむしろドーハ閣僚会議で合意された農業分野の改革の継
続にその努力を傾注すべきであるとしている。

  トラス農相は、豪州は世界の国々の中でも相対的に病害虫や疾病から清浄であ
り、その地位を維持するためには検疫に対して慎重なアプローチを採用するとし
ている。逆に同農相は、ホルモン牛肉の問題を例に、EU自身の多くの検疫措置
に懸念を持っているとしている。

  なお、トラス農相は3月中旬に開始された米国との自由貿易協定(FTA)交
渉に先立つ2月14日、豪州の厳格な検疫基準はいかなるFTA交渉においても揺
らぐことはないと明言している。


生産者団体も現行検疫制度堅持を要請

  生産者団体である全国農業者連盟(NFF)のコリッシュ会長は、豪州の検疫
制度が農産物貿易に対する非関税障壁として使用されているというEUの主張に
対して拒否するとした上で、「われわれの制度は科学に根拠を置いており、透明
性も確保され、SPS協定とも全く矛盾がなく、われわれは連邦政府がこのEU
からの挑戦を断固として拒否することを求める」と連邦政府と同様の見解を示し
つつ、政府を後押しする姿勢を見せている。


◎マレーゴールバンとボンラックの合併交渉がとん挫(豪州)

  豪州2大乳製品メーカーの大型合併計画として注目されていたマレーゴールバ
ンとボンラックフーズの合併交渉が打ち切られることとなり、3月21日に両者か
ら発表された。

  これについてマレーゴールバンは、豪州の酪農協の大型化による潜在的な利益
を認識しつつも、ボンラックフーズの抱える債務が合併後の数年間にわたり足か
せになり、同社の株主であり生乳供給者である酪農家に、合併による十分な利益
を与えることが困難であると判断を下した。

  今後、マレーゴールバンが国際競争力強化を目指した別の選択肢を追及する一
方、ボンラックフーズは財務改善のために新たな戦略を模索するとしている。



【シドニー駐在員 粂川 俊一 4月3日発】 
 
 
 

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