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合意断念は残念だが、驚いてはいない ジュネーブで開催されていたWTO農業委員会特別会合においてハービンソ ン議長が「現状での合意形成は難しく、3月末期限を守ることはできない」と の発言により、モダリティーの交渉期限内での合意を断念したことを受け、ベ ネマン米農務長官とゼーリック米通商代表部代表は3月31日、「合意断念には 失望しているが、驚いてはいない。今後は他のWTO加盟国とともに9月のメ キシコ・カンクーン閣僚会議に向け農業交渉が円滑に進み、実のある結果が出 せるよう努力するつもりである」と述べた。共同声明の概要は次のとおり。 米国提案の妥当性を強調 われわれは、WTO農業交渉が最終合意に達するまでに紆余曲折があること は判っていた。WTO加盟145カ国にはそれぞれの思惑があり、交渉が単純で 平易でないことは当初から承知していた。米国は、この交渉のゴールが、ドー ハで確認されたように農業分野での補助金や関税の大幅な切下げであると信じ 、米国の主張はそれに即したものになっている。他の加盟国が米国の主張に賛 同するのであれば、米国は市場を開放する用意がある。WTO加盟国のより自 由な農産品の貿易が達成されなければ、発展途上国などの成長を促進すること はできない。われわれは、世界の農業貿易を改善するために、これまでの提案 (スイスフォーミュラー方式による関税率を一律25%、輸出補助金の削減など )を引き続き主張してゆく。われわれは、加盟国が農業分野の改革に意欲的に 努力しているか疑問を抱いている。ハービンソン議長の農業交渉進展のための リーダーシップは賞賛に値し、大幅な関税率、補助金の削減を求めていること は重要なポイントであるが、現時点の議長提案は満足できるものではない。い くつかの加盟国が、交渉の進展を阻害している。 また、EUはCAP改革案を進展させるべきであり、日本は、少数品目(米 など)を守るために交渉を阻害すべきではない。この交渉の結果、途上国は関 税障壁の削減などにより農産品等の輸出機会が増大し、多大な利益を得ること ができる。すべての加盟国は、この交渉において政治的問題に直面しているが 、われわれは発展的な解決を図るため互いに補い合う(譲歩する)必要がある。 共同声明は、これまでのジュネーブにおける交渉の進展やハービンソン議長 案を米国が現時点で受け入れられる立場にないことからモダリティーの3月末 までの合意は不可能であると予想していたことを示すものと考えられる。しか し、9月のカンクン閣僚会議に向け米国が他の加盟国といかなる歩み寄りを行 うのか示唆する内容は含まれていない。 業界団体の反応もほとんどなし また、全米最大の農業団体であるアメリカン・ファーム・ビューロー(AF BF)は今回の期限内合意断念を残念な結果としながらも、9月のカンクーン 閣僚会議に期待するとし、仮に今回の交渉が2004年末の最終期限までに合意に 至らなかった場合、ブッシュ政権の持つ貿易促進権限(行政府が議会から通商 協定に関する交渉権限を与えられ、議会には協定の実施法案について、その賛 否を一括して問うことができる)が2005年1月に失効することを挙げ、米国の 交渉スタンスが弱くなることを危惧しているとしている。 【ワシントン駐在員 道免 昭仁 4月2日発】
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