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HPAI、オランダからベルギーに拡大
ベルギー連邦食品安全庁(AFSCA−FAVV)は4月15日、オランダ国 境近くのリンブルグ州で、鳥インフルエンザが発生した疑いがあると公表した。 翌16日には、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)であることが確認された。 HPAIは、主に家きん類が罹患する致死性の高い伝染病で、家きんペスト とも呼ばれる。今年3月1日、オランダの中東部で発生が確認された後、オラ ンダ政府による懸命な防疫対策にも関わらず、同国の南東地域に感染が広がっ ている。4月21日午後5時時点で、1,001農場における1,820万羽の鶏がHPA Iの防疫対策として殺処分された。オランダのHPAIの発生はベルギー、ド イツ国境近くまで広がっており、発生農場を中心に半径約10キロメートルに設 定される監視区域の一部が、ベルギーやドイツとの国境を越える事例も出てい た。このため、これら近隣国へのHPAIの感染拡大が懸念されていた。 ベルギーでは3月上旬にも、1農場で1,200羽の鶏が死亡したことから、H PAIの発生が疑われた。この際は、停電による空調設備の故障が原因である ことが判明している。しかし今回、ついに、ベルギーでのHPAIの発生が現 実のものとなった。 なお、現時点で、ドイツではHPAIは発生していないが、ドイツ政府当局 は、オランダ、ベルギーおよびEU委員会の担当部局と連携して、HPAIの 進入防止に当たっている。 EUと協力し防疫対策を実施 HPAIの発生確認に伴い、ベルギー政府はEU委員会の担当部局と協力し て、EU指令(理事会指令92/40/EEC)に基づき、4月16日正午から @生き た家きんおよび卵のベルギーからの輸出禁止、A生きた家きん、卵(消費用卵 を除く)、ふん尿の運搬禁止などの防疫対策を実施したほか、発生農場および 発生農場から3キロメートル以内の防疫区域内の農場で飼養される約25万羽の 家きんの殺処分を行った。 22日時点の感染農場数は3カ所、この他、感染を疑われる農場数は2カ所と なっている。 こうした状況を受けて、EU委員会は16日、ベルギーでのHPAIの発生に 対するEUレベルでの防疫措置を決定し、4月25日まで、生きた家きんおよび 卵について、ベルギーから他の加盟国およびEU域外への輸出を禁止した。 HPAIで欧州初の死者 一方、オランダで19日、HPAIの感染農場で作業していた獣医師が死亡し たことが明らかとなり、畜産関係者を中心に動揺が広がっている。死亡した獣 医師の肺からHPAIウイルスが見つかっており、HPAI感染により死亡し たとの見方が強い。オランダにおけるHPAIの人への感染は、農場の労働者 や獣医師など既に数十例が報告されているが、結膜炎などいずれも軽症であっ た。HPAI感染による死亡者は、97年および2003年に香港で報告されている が、欧州では初めてである。 EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は4月23日、オランダおよびベ ルギーに対するEUレベルの防疫対策を5月12日まで延長するとともに、公衆 衛生の観点からも対策を検討し始めた。一般市民へのHPAI感染の危険性は ほとんどないとみられている。ただし、オランダ、ベルギー政府は、直接HP AI感染鶏に接触する農場の労働者や獣医師などに対しては、ワクチン接種や 抗ウイルス剤の使用などを推奨している。
【ブラッセル駐在員 山田 理 4月23日発】
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