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EUの集約的豚肉生産と環境への影響


EUの豚肉生産量は、世界の20%
 EU統計局(EUROSTAT)は先般、「環境への影響を伴う集約的な豚肉産業」と
題するショートレポートを公表した。その概要は、以下のとおりである。

  EUの豚肉生産量(2000年)は、枝肉ベースで1,760万トンに上り、世界の豚肉
生産量の約20%を占めている。96年から97年かけて、豚コレラの大発生に見舞わ
れたにも関わらず、95年から99年かけてEUの豚肉生産量は11%増加した。
 
  一方、消費を見ると、EUの1人1年当たりの豚肉消費量(2000年)は43キロ
グラムで、食肉消費量の46%を占め、またイギリスを除くEU14カ国で、食肉の
中で豚肉の消費が最も多くなっている。豚肉の消費量は近年増加しており、特に
、ギリシャ、ポルトガル、スペインなどの南欧諸国で顕著である。

9つの地域でEUの豚の半数を飼養
  
  EUの豚飼養頭数(2000年)は、1億2,300万頭であるが、ドイツ、スペイン、
フランス、オランダ、デンマークなど8カ国で、EU全体の90%の豚を飼養して
いる。地域別に見ると、ユトランドおよびアイランド(いずれもデンマーク)、
ニーダーザクセン(ドイツ)、ブルターニュ(フランス)、南ネーデルランド(
オランダ)などの9つの地域で、実にEUの豚総飼養頭数の半数が飼養されてい
る。これらの地域の農地面積はEU全体の10%に過ぎず、貿易港に近接した商工
業などが盛んな地域である場合が多い。
 
  また、EUの豚飼養農家戸数(2000年)は90万戸であるが、豚肉生産の大部分
は、規模の大きい養豚農家が担っている。飼養規模が400頭以上の農家で全体の
83%、1,000頭以上の農家で全体の60%の豚を飼養している。
  こうした限られた地域に多数の家畜が存在していることは、環境に対する大き
な圧力となり、家畜衛生や公衆衛生に関する問題だけでなく、環境汚染を引き起
こす要因になっていると論じている。

硝酸塩汚染と養豚産業

  養豚農家が原因となる硝酸塩汚染は、いくつかの方法で抑制することが可能で
あるが、最も根本的な解決策は、豚や養豚農家数を減少させることである。こう
した方法は、早期離農や経営中止に対する奨励金の交付などにより、オランダや
ベルギーで実施されている。

  このほか、その効果を定量することが困難なものもあるが、汚染を抑制するた
めいくつかの取り組みとして、@ふん尿の貯蔵、散布および管理に関すること、
A窒素含量の管理など飼料に関すること、B畜舎の構造に関すること、Cたんぱ
く質の消化などに関する遺伝的な研究が行われている。こうした取り組みは、多
くの加盟国で推奨されているが、北欧諸国では義務とされていることが多い。
 
  また、大規模経営と環境汚染の関係については、大規模農家の存在を環境汚染
の原因として機械的に見るべきではないと指摘している。その理由として、@集
約的経営は、多くは知識を持つ農家による経営であり、環境に与える負荷が少な
い(生産される豚肉1キログラム当たりの窒素排出量が少ない、または、消費す
る水および飼料の量が少ない)。A農家によって実施できる環境汚染を低減させ
るための手法は、多くの場合、大規模経営に適合しやすいと考えられるとしてい
る。

【ブラッセル駐在員 山田 理 2月5日発】

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