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干ばつの影響は5年以上に 現在、豪州食肉業界が直面している脅威は、豪ドル高・米ドル安による輸出競 争力の低下、なかでも、アルゼンチン、ウルグアイなどの南米諸国の食肉輸出業 者との競争の激化と、深刻な干ばつの影響であるといわれている。 このうち、干ばつの影響については、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が、 「干ばつはこの秋にも終息するとみられているが、5年間は牛肉などの食肉生産 に大きな影響を及ぼす」との報告が発表した。また、豪州農業資源経済局(AB ARE)も、「今年の秋に干ばつが終わったとしても、牛群の再構築には6〜7 年要する。羊にいたっては10年必要。」と同様に干ばつの影響の深刻さを述べて いる。 食肉生産量が大幅減少 MLAによれば、「干ばつの影響により、生産者は2001年の終わり頃から経営 規模を縮小してきたが、昨年後半からそれが加速してきている」としている。飼 料不足や飼料価格の高騰で家畜の処分を余儀なくされたことや、暑さで出生率が 下がり生産性が落ちたこと、死亡率が上がったことなどから、2003年6月時点の 肉牛の飼養頭数は前年比4%減少、羊は同6%減少するとみている。 また、飼養頭数の減少に加え、干ばつの終息後、生産者は牛群等の再構築を行 いうことから、と畜に仕向ける頭数が減少すると見込まれる。このため2003年の 牛肉および羊肉生産量はそれぞれ前年比7%、9%減少すると予想している。 一方、2003年の牛肉の輸出量については87万5千トンと前年比5%減少、2004 年もさらに減少するとみており、また、羊肉の輸出量も2003年は同12%落ち込む と予想している。牛肉については、生産量の減少の影響は、日本市場の回復や韓 国や他のアジア諸国の需要の拡大など強い需要に支えられて、最小限に留まると しているが、食肉処理加工業界では、現在の干ばつの状況について、強い懸念を 抱いており、ある大手食肉加工処理業者は、「食肉輸出業者が懸命な努力をして 海外市場を開拓してきたが、供給量が少なくなると、輸出契約を履行できなくな る。昨年のクリスマスまでに雨が降っていればよかったが、週を重ねるごとに状 況は悪くなっている。」と述べている。 好調に推移した生体牛輸出も減少の見通し また、MLAは、生体家畜の輸出量についても同様に減少すると予想している。 生体牛の輸出頭数については、東南アジア諸国の経済復興、韓国への輸出再開な どで「ミニブーム」とも言われ、過去最高の 97万7千頭を記録した。しかし、今 年は、91万5千頭と前年比 3%の減少となることが予想され、羊については 7% も減少することが見込まれている。 干ばつの長期化で事態のさらなる深刻化も こうした見通しは今年の前半に干ばつが終息するということが前提であるが、 アンダーソン副首相は1月24日、ブリスベンで開かれたクインズランド州農業者 連合の会合で、「米国はエルニーニョ現象がさらに続くと予想しており、干ばつ がもう1年続く恐れがあるので、対応策を検討する必要がある。」と述べた。干ば つが長引けば当然、事態はさらに悪化する可能性がある。
【シドニー駐在員 井上 敦司 2月6日発】
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