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昨年7月の乳価支払い見込みを3%下げ ニュージーランド(NZ)の巨大乳業メーカーであるフォンテラは2月12日、 2002/03年度(6〜5月)の生乳供給者への乳価支払い見込みについて下方修正 したことを発表した。今回発表された乳価は昨年7月に設定された1キログラム 当たり3.70NZドル(241円:1NZドル=65円、乳固形分ベース)から3%ダ ウンした3.60NZドル(234円)であり、この発表はフォンテラの上半期決算(2 002年11月現在)の発表と関連して行われた。 フォンテラのへイデン会長は、「乳価の支払い見込みについては、頻繁に検討 してきたが、上半期決算の決定と8ヵ月間の取引実績から、最初に見込んだとき より明確な方向性がはっきりしてきた」とし、「現在、3.60NZドルが最善の見 積もりである」と述べている。 生乳供給者である酪農家側は、当初見込まれた乳価でさえ 01/02年度の乳価5. 33NZドル( 346円)を大幅に下回るものであったため、今回の下方修正だけで なく、「フォンテラの設立はより好ましい乳価をもたらすはずだった」と同社設 立に際しての期待感が損なわれたことに不満を表している。 背景は国際市況とNZドル高 フォンテラによれば、製造費や間接経費などのコストの合理化により、今年度 の上半期も順調な経営実績を上げたとされている。同社では、3年以内に3億 1,000万NZドル(約202億円)のグループ全体の利益を獲得するという同社の設 立時の目標について、2002年11月30日時点で既に1億1,600万NZドル(約75億 円)以上達成されていたことから、経営は軌道に乗っているとしている。 ただし、上半期決算について見ると、営業収益が前年同期の70億NZドル( 4,550億円)に対して約60億NZドル(3,900億円)、純利益が同じく2,200万N Zドル約14億円)に対して1,800万NZドル(約12億円)といずれも前年同期を 下回っており、同社では、年度開始前半における国際市況の低迷が利益を侵食し たとしている。 ヘイデン会長は、「国際市況は回復したものの、収益減少の影響を埋め合わせ るのに十分ではないことが明確である」としている。 また、同社では、最近の為替相場におけるNZドルは約55米セント位の取引で あったが、年度当初と比べて15%以上も上昇しており、年度末の在庫価値にも影 響するとみている。 同会長は、「国際市況は10年以上の間で最も低い水準にあり、NZドルはここ 4年近くで最も強かった」と総括している。 来年度の乳価についても言及 ヘイデン会長は、この乳価支払い見込みの下方修正が同社の株主であり供給者 である酪農家に打撃を与えることを、認識した上で、「現実は、フォンテラが極 めて難しい環境で事業を展開する国際企業である」と理解を求めるとともに、酪 農家が今後の経営計画を見通せるように、「酪農家に対して可能な限り透明性を 確保する」精神に基づき、前もって正確な情報を提供するとしている。 その一環として、来年度(03/04年度)の乳価支払い見込みについても、同会 長は、「現在のNZドル高の継続や国際市況が今後より高い水準で推移すること を想定すると、来年度は3.70NZドルから3.90NZドル(254円)の範囲での支 払いが現実的である」と示している。 順調な海外市場展開 このような状況下、同社の海外市場における展開は順調に進んでいるようだ。 昨年、ネスレとの合弁事業で立ち上げた中南米の市場における乳製品製造・販 売会社であるデイリィー・パートナー・アメリカズについては、今年1月からブ ラジル、アルゼンチン、ベネズエラで操業を開始した。 一方、豪州では、マレーゴールバンとの合併交渉を行っているボンラック・フ ーズの申し出によりオーストララシアン・フード・ホールディングス社の株式を 購入する見込みで、結果的にフォンテラは現在における同社の75%の持ち株に加 え、約1億4,700万NZドル(約96億円)で11.4%を獲得し、豪州とNZにおけ る消費者向けブランドを持つ同社をほぼ完全に掌握することとなる。
【シドニー駐在員 粂川 俊一 2月19日発】
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