ALIC/WEEKLY
(ブラジルのGM作物を巡る情勢について、「畜産の情報」2002月12月号p72〜73を参照)
ブラジル、バイオセーフティー暫定証明書モデルを中国へ提出 2002年3月中国は、遺伝子組み換え(GM)農産物の輸出国に対し、GM作物の 生物や環境への影響・安全性を評価した資料等の提出を求め、それを中国政府 が認定したもののみ12月20日以降輸入可能とする決定をしたが、その後、技術 上の問題を理由に2003年9月20日まで期限を延期した。 中国に大豆を供給している輸出国の中でGM大豆の生産と販売が法令および司 法上許可されていないブラジルの場合、輸出する大豆が非遺伝子組み換え体 (非GMO)であること(「栽培していないこと」と「混入していないこと」)を 証明する必要が生じた。ブラジル政府は、国境を接するアルゼンチン産GM大豆 が混入するリスクがあると考え、その対応に苦慮していたところ、中国政府は、 12月20日までに対応がなければ輸入を認めないと通告した。このため両国は交 渉し、ブラジル政府がバイオセーフティ証明書モデルを中国政府に提出し、認 定を受け、これを暫定的に添付することにより、中国は輸入を認めることとし た。 ブラジルが提出した暫定証明書モデルには、@現在の法令下等でブラジルか ら輸出される大豆は非GMOである、Aしかし、GM大豆を生産するアルゼンチンと の国境地帯ではGM大豆が混入する可能性があることを否定しない、BもしGM大 豆が混入したとしても、それは中国がすでに米国やアルゼンチンから輸入して いるラウンドアップレディであるためリスクはないとしている。さらに国家バ イオ安全技術委員会(CTNBio)が「ラウンドアップレディは、環境や人 体等に対するリスクを立証する根拠はない」としたCTNBio通達第54号を添付し ている。12月12日ブラジル政府は、暫定証明書モデルを中国政府に提出したが、 中国政府から一部訂正の必要があると指摘されたため、ロドリゲス農相は2003 年1月14日、中国大使に該当箇所を訂正した暫定証明書モデルを手交した。
非GM大豆の証明システム案を公表 一方、ブラジル農務省は1月13日付けコミニュケにおいて、「ブラジル司法 当局がGM大豆の生産と販売を許可しない場合、暫定証明の有効期限である9月 20日以降輸出される大豆には「非GMO証明」が必要となるため、2002年12月19 日付け農務省令第79号(官報公布2002年12月31日)において「非GM大豆の証明 システム案」を公表し、パブリックコメントを募集している」と報じている。 こうした中、14名からなる中国政府の技術ミッションが1月10〜22日までブ ラジルを訪れており、ブラジル農牧研究公社や大豆の三大生産州のうち2州 (マットグロッソ州およびパラナ州)を視察し、大豆の生産、販売状況につい て農務省と情報交換を行う予定である。公式の目的は、中国にも類似した地帯 があるセラードにおける大豆栽培技術の視察となっているが、現地では大豆の 証明に関連した調査であるとの報道もある。 2003年中国向け輸出を500万トンと予測 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)の統計によると、2002年1〜11月 にブラジルが輸出した大豆(粒)1,541万トンのうち409万トン(26,5%)が中 国向けであり、最大の輸出市場となっている。また、中国向け輸出の40.7%が パラナ州、次いで29.9%がリオグランデドスル州(残る三大生産州の一つ)で 、ともにアルゼンチンと国境を接している。 ブラジル農務省では2003年の大豆生産量を4,760万トンと予測し、そのうち 1,950万トンが輸出され、中国へは500万トンが向けられるものとしている。 大豆輸出に係るバイオセーフティ証明の問題は、ブラジルにとって中国は 最大の市場である一方、中国にとってブラジルは非GM大豆の最大の供給国で あるため、両国にとって極めて重要であり、またブラジルにおけるGMO生産お よび販売許可が今後どのような展開となるのかも含め、両国の動きが注目さ れる。 【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 1月22日発】
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