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牛肉産業への深刻な影響を予測 豪州農業経済局(ABARE)は2002年12月、2002/03年度(7〜6月)の牛 肉生産動向について、干ばつの影響が深刻であるとの予測を発表した。これによ ると、2003年6月時点の牛飼養頭数は前年比3%減とここ15年間で最大の減少率 になるとみている。また、畜産農家の平均収入は、前年度比約6割減になると予 測している。さらに、2002/03年度の肉牛価格は、前年度比約22〜23%安の平均 237セント/キログラムまで下落するとみている。この主因は干ばつによる肉牛の 出荷増によるものとしている。2002年6月以降、肉牛生産者価格は前年同月比を 2割程度下回っていたが、2003年も引き続き低迷すると見込んでいる。 干ばつの影響でと畜頭数の増加続く 一方、豪州統計局(ABS)は1月6日、2002年11月の肉牛のと畜頭数を発表 した。それによると、11月のと畜頭数は、前年同月比17%増の約76万3千頭、中 でも雌牛は同23%増の約36万3千頭と大幅に増加し、全体のと畜頭数、雌牛と畜 頭数のいずれも5ヵ月連続で前年を上回る結果となった。また、2002年1月〜11 月累計で見ても、と畜頭数は前年同期比2%増の約744万頭、うち雌牛は同5.5% 増の約365万7千頭となった。このように干ばつの影響で肉牛の早期と畜が進む 中、酪農の盛んなビクトリア州においても乳用経産牛をと畜に回す傾向にあるな ど、その影響が、雌牛のと畜動向にも顕著に表れてきていることが数値で明らか になった。 雌牛のと畜進み、牛群の再構築にも影響 これについて、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)では、雌牛のと畜率の上 昇は、牛群の維持に影響を及ぼすとみている。また、干ばつが終息すれば、生産 者が牛群の再構築に動くため、肉牛の需給がタイトになり、とりわけ繁殖雌牛の 価格が上昇するとみている。このように、干ばつが肉牛の再生産基盤の維持にま で影響を及ぼしてきている。 なお、豪州フィードロット協会(ALFA)は、昨年開かれた肉牛業界団体の 会議の席上、現在の干ばつが及ぼしている影響について次のように述べている。 @家畜の出荷が増加した。A穀物等の飼料コストが値上がりし2倍になった。 B多くの更新時期が来ている雌牛がと畜に回された。Cと体重が減少した。D子 牛段階での死亡が多くなった。E妊娠牛が減少した等。
【シドニー駐在員 井上 敦司 1月22日発】
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