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鶏卵供給が急増
タイ農業協同組合省農業経済室によれば、2002年の鶏卵生産量は 94億5千万個 となり、前年比16.8%増の大幅な伸びを示した。このようなタイ国内における鶏 卵供給量の急激な増加は鶏卵価格の大幅な下落を招いており、小規模生産農家の 経営に深刻な影響を及ぼしている。 このような状況を受けて、家きん生産振興協会は、2002年12月に開催した会議 の場で、@原種鶏(Grand Parent Stock:GPS)の過剰輸入、A大手3社によ る生産過剰分の投げ売り、が今回の鶏卵価格下落の要因であるとし、大手の経営 を批判した。 原種鶏の過剰輸入と大手の乱売 大手インテグレーターであるチャロン・ポカパン(CP)社は1997年末から、 それまでのペアレント・ストック(PS)の輸入をGPSの輸入に切り換え、卵 用鶏ひなの生産コスト削減を行っている。この切り換えに当たり、CP社は畜産 開発局(DLD)との間で輸入GPSに由来するPSのうち、年間約27万羽をマ レーシアをはじめとする周辺各国に輸出し、残りの17万〜20万羽を国内の更新用 とすることで合意していた。しかし、CP社はその後、さらに20万羽分の生産余 力があるとして、なし崩し的に国内農場に供給するPSを増やした結果、採卵鶏 の生産過剰を招いたと協会はみている。 また協会は、CP社の他にも、大手インテグレーターであるベタグロの子会社 であるベターフード社およびレムトン社も、GPSの輸入に伴うタイ国内におけ るPSの生産過剰から、鶏卵の供給過剰を招き、鶏卵価格を大幅に下降させたと している。 このような協会の主張について、農業経済室は、2000年のGPSの輸入羽数は 前年の3,885羽から約3倍の1万18羽にまで増加している一方、PSの輸入羽数が 前年比36.2%減の25万2,183羽となっているのに対して、2001年のPS輸入羽数 が同25%増となっていることから、PSを含む種鶏輸入羽数の急激な増大が2002 年の生産過剰の要因とみている。
対策委員会の設置 卵価下落による小規模生産者の経営悪化に対処するため、農業協同組合省は鶏 卵の生産から流通、消費の対策を検討する委員会と輸入PSによるひなの生産調 整を検討する委員会を立ち上げた。これらの委員会では、PS輸入業者(大手イ ンテグレーター)を中心に、GPS、PSから卵の生産に至るまで広範なデータ を収集し、鶏卵供給過剰から価格暴落を招く事態を避けるための検討を行うこと としている。現在、生産・流通・消費検討委員会では、暫定的に鶏卵1個当たり の市場価格の下限を1.38バーツ(約3.8円:1バーツ=2.8円)と定める規則を設 け、これに違反する業者があった場合は商務省国内取引局とDLDの連携により、 行政処分を行う方向での検討がなされている。
大手の生産調整に対する反発は続く 今月16日には、国内取引局とCP社を含む国内大手インテグレーターとの間で 会合がもたれ、鶏卵価格回復のため、この 5〜6週間のうちに130万羽を淘汰する ことで合意したが、合意後も業界内部では不満がくすぶっていると伝えられてお り、現在までのところ淘汰は進んでいない。 また、鶏卵生産貿易協会は、鶏卵を粉末化することで供給過剰を緩和できると して、粉末化プラントに対する助成を求めているが、政府はこれを実現性に乏し いとして、補助金等の投入には難色を示している。
【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 1月22日発】
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