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5月のMSA格付け率、過去最高を記録 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は7月9日、牛肉の格付け制度として実施 しているミート・スタンダード・オーストラリア(MSA)により格付けされた5 月の牛肉数量(頭数ベース)は、前月に比べ43%増の4万3,603頭となったと発表し た。この格付け頭数は、MSAによる格付けが始まった1999年以来、月単位で最も 多い格付け頭数であり過去の記録(01年10月)を28%も上回る結果となった。 MLAでは、MSAによる格付け頭数の増加要因について「MSAによる格付け の商業的利用価値の大きさを認めた大手食肉加工業者が増えてきたため」と述べて いる。 MSAは、牛肉消費の伸び悩みを打開するべく、消費者に食味の保証など行うシ ステムで、小売牛肉に最上級から金、紫、緑の3種類の「MSAラベル」を添付し、 併せてその牛肉に適した調理方法を表示している。MSAにより格付けを行う際に は、品質(食味)を保証する上で、肉牛生産者からと畜場、小売部門に至るまです べての段階で登録が義務付けられ、重要監視点により厳しく管理が行われる。現在 、小売業者1,564店、加工業者35社がMSAに登録している。 2002年の年間格付け頭数は約35万頭(月当たり約2万9,000頭)で、これを州別 に見ると、豪州の肉用牛の約45%を飼養しているクインズランド州が最も多く49.9 %と半数を占め、次いで西オーストラリア州29.6%、ニューサウスウエールズ州 17.4%、南オーストラリア州1.8%、ビクトリア州1.3%となっている。 MLAでは、4月に韓国でMSAにより格付けされた牛肉を試験販売するなど、 海外市場への普及にも努めている。 MSAの普及度はまだ不十分 一方、5月のMSA格付け頭数は、5月の豪州全体のと畜頭数は6.8%(01/02 年の月平均と畜頭数約63万7,000頭)に留まっており、普及度はまだ不十分であ る。 業界紙によると、牛肉購入に当たって消費者は、依然として品質よりも価格を 重視している面があり、すべての高級牛肉ブランドはMSAによる格付けを行っ ているが、ほとんどの消費者はその格付け表示の意味を理解していない。「プロ モーションツールとしては、MSAではなくブランド名を使用するほうが単純で 容易」として、ブランドによる差別化を考えているとの卸売業者の意見もある。 従って、牛肉の消費量が減少している中、消費の回復という当初の目的に向け、 消費者に対してより一層のMSAシステムの認知度の向上を図ることが課題とな っている。 格付け制度をめぐる議論は継続 豪州牛肉の格付けをめぐっては、今年2月に牛肉消費を促進するため格付け制 度を全国的な法制度として整備すべきとの提案が一部の大手食肉加工業者から提 起されたが、トラス農相はその判断を業界に委ねていた(海外駐在員情報第569 号参照)。 その後、3月に入ってこの問題とは別に、トラス農相が食肉諮問委員会(RM AC)に検討を指示していた食肉の格付けと老廃牛の牛肉の店頭表示「Budget beef」に関する答申が提出された。その内容は、MSAと老廃牛肉の表示を何ら かの形で統合し(詳細は未報道)、現状どおり自主的な規制で行うというもので ある。これに対する業界等の反応は、進展が見られないとして @前述の大手牛 肉加工業者は、依然としてMSAの法制化を要求し、A生産者団体である豪州肉 牛協議会(CCA)は、老廃牛肉の店頭表示徹底を図るための法的規制をトラス 農相に申し入れた。これを受けて、RMACでは、再度、業界関係者で議論の場 を設け検討していくこととし、トラス農相は業界の議論を経た上で解決を図る様 子である。 【シドニー駐在員 井上 敦司 7月17日発】
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