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GM作物の輸入規則を施行
フィリピン農務省はこのほど、遺伝子組み換え作物(GMO)を含む飼料等の輸 入許可制度を開始すると公表した。GMOの取り扱いに関しては2002年4月に発表 された同省による政令第8号(GMOを用いた農産物の輸入や国内での作付けに際 する規制および関係各機関の役割分担を定めたもの)の規定に従うこととされ 輸入許可制度を開始する日は政令発表時点で決まっていなかった。 GMOの環境 や人体に対する影響をめぐっては国内で議論が紛糾してきた経緯があり、政令 第8号の具体的運用は今まで繰り延べになっていた。 今回の発表によると7月1日以降、飼料作物等の輸入に際して輸入業者はGMO 作物の品目等を申請、同省作物局と畜産局が輸入の可否を判断する事とされて おり、現在17品目の許可申請が挙げられている。 なお、すべての当該輸入品は作物局バイオテクノロジーチームが60日以内に 申請内容について評価し、その許可が輸入許可を与える判断材料とされること になる。 同チーム担当者によれば、世界各国の輸入業者は GMOを用いた製品を輸入す るに際し同様の手続きのためのコストを負担しており、同国の業者も同様にコ ストを負担するのは当然であるとしている。 これに対し同国大手食品企業であるサンミゲル社などで構成するフィリピン 飼料製造者協会は、GMO飼料原料の輸入が増加する恐れがあり、飼料原料国 内需給に与える影響が大きいとして許可制度の開始を年末まで延期するよう政 府に要望していたが、農務省はこれ以上政令 第8号に関する具体的取り組みを 繰り延べすることは出来ないとしてこれを拒絶した。 GMOの国内作付けをめぐる状況 モンサント・フィリピン社等、同国の大手種苗会社4社は政府に対し、トウ モロコシを始めとする大豆や綿花などのGMO種子の使用認可を申請している。 このうち現在、モンサント社のBT (Bacillus thuringiensis)トウモロコシ の一系統のみが国内生産の認可を得ており、7月から本格的な作付けが開始さ れている。 一方、同国では GMOの導入をめぐり、近年環境保護団体などによる反対運動 が活発化している。これらの団体は GMOが環境や人体におよぼす影響が検証さ れていないとし、昨年にはミンダナオなどGM作物の試験栽培圃場を焼討ちする などの実力行使を行っている。このような状況の中でGMトウモロコシの生産者 は政府に対し、GMOに反対する各団体からの妨害を排除するよう求めている。 GMOの普及によりトウモロコシを始めとする農産物の増産を図ろうとしてい る生産者や政府は、これらの改良作物を栽培することで、毒性の高い殺虫剤の 使用を低減することが出来るため、むしろ従来の作物よりも人体や環境におよ ぼす悪影響は少なくなるとしている。また、農薬等の使用量を減少させること で生産費の削減も期待できるとしている。 トウモロコシの生産予測 なお、農務省の観測によると今年の同国のトウモロコシ生産量は前年対比9.3 %増の470万トンに達すると見込まれている。これは7月〜9月の作付けの増加 が見込まれることや、7月から開始された GMトウモロコシの作付けによる影響 などにより第3四半期の収穫が昨年に比べ9%程度上回る見込であることなどに よるとされている。農務省はこれにより、トウモロコシの自給率を現在の67% から80%程度まで引き上げることが出来るとしている。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 7月16日発】
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