ALIC/WEEKLY
EU委、最終合意に向け検討
EU委員会は6月10日、EUの共通農業政策(CAP)改革案について検 討を重ねてきたことから、6月11、12日に開催されるEU農相理事会で最終 合意に達するとの自信を示した。 CAPの中間見直しは、拡大するEUの21世紀の農業政策の指針を示した 「アジェンダ2000」において、2002年に実施することが合意されていた。こ れにより、EU委員会は2002年7月10日、CAPの中間見直しに関する報告 書を公表し(「畜産の情報」海外編2002年11月号参照)、2003年1月22日、 新たな直接支払い制度の創設、農村地域開発対策の改正、牛乳・乳製品の価 格支持政策の改正などのCAP改革に関する7つの規則案を公表している。 妥協した政策は望まない このCAP改革案については、農相理事会のほか、議論の深化、スピード アップを図るため、農業特別委員会や2003年4月末に創設されたトップクラ スのワーキンググループで激しく議論が交わされてきた。また、2003年5月 のEU農相理事会では、EU委員会およびEU加盟15カ国に加え加盟候補国 10カ国の代表とでCAP改革に関する議論が行われた。 これらの議論を踏まえ、EU委員会のフィシュラー委員(農業・農村開発 ・漁業担当)は、次のようにコメントしている。「われわれの支持すべき政 策は、農家、消費者、納税者のために、長期的、現実的、持続可能なものと するべきである。このために、農業生産と農業補助を切り離した政策(デカ ップリング政策)、農業開発政策を強化し、現代社会で農家に求められてい る利益で、助成の均衡を保たなければならない。委員会は、加盟国の要求を 聞いているが、生産者に余剰生産をさせ、納税者の税金を無駄にするような 妥協した政策にはしたくない」と述べ、今回の改革に強い決意を示している。
イギリスは賛成、フランス、ドイツ等は反対
今回のEU委員会の改革案に対して、イギリス環境・食料・農村地域省( DEFRA)のマーガレット・ベケット大臣は、同委員会の意見に賛成して おり、「CAPはヨーロッパのためだけではなく、世界中の人々のために必 要である。今回のCAP改革は、今後の世界貿易機関(WTO)交渉にも非 常に有効な影響を与えるだろう」と述べている。一方、フランス農業漁業省 のエルベ・ガイマール大臣は、「9月にメキシコのカンクンで開かれるWT O会議ですべてをやり直さなくてはならないのに、なぜ6月に改革に合意す る必要があるのか」と今回のCAP改革案に否定的な見解を示している。 また、ドイツ、スペインはフランスの意見に賛成すると報道されている。 結論には至らず再度開催へ 6月11、12日に行われたEU農相理事会において、CAP改革案について 議論されたが、各国の歩み寄りがうまく行かず、結論が出るまでには至らな かった。この件については、6月17日に再度開催されることとなった。
【ブラッセル駐在員 山ア 良人 6月13日発】
元のページに戻る